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血管炎症候群

1.血管炎症候群とは?(定義)
2.血管炎症候群に含まれる病気とは?
3.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(頻度・疫学)
4.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
5.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
6.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
7.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
8.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
9.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
10.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)


1.血管炎症候群とは?(定義)
  血管炎症候群とは、全身のさまざまな血管に炎症が起こり、血管の流れが障害されて起こる特殊 な病気の総称です。血管系以外の他の臓器に炎症が起こり、その影響を受けて二次的に血管に炎症が及んだものは除きます(肺炎や肝炎で、肺や肝臓の血管に炎症が及んだものなど)。
血管炎 症候群の中には、次の項目で説明する個々の疾患が含まれています。病気の正式な名前は、この個々の疾患名になります。しかし、個々の病気の診断は、専門家でも難しいことが多く、また、いくつかの病気が同時に起こってくることもあります。そのため、"血管炎症候群"という呼び方が使われるようになりました。
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2.血管炎症候群に含まれる病気とは?
 

血管炎症候群には、様々な独立した疾患が含まれます。血管炎症候群で起こる症状は、主に障害を受ける血管のサイズ(血管径)に関連していることから、各疾患は障害血管サイズに分類されています。 図1に示すように、1)大動脈、幹動脈、2)中、小筋型動脈、3)毛細血管、細静脈が障害されるものに分類するのが一般的です。1)には高安動脈炎、巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)、2)には結節性多発動脈炎ウェゲナー肉芽腫症チャーグ・ストラウス症候群、3)にはヘノッホ・シェーンライン紫斑病、過敏性血管炎などが含まれます。最近知られるようになった顕微鏡的多発血管炎は、2)の細い部分から3)にかけて血管炎が起こります。 。

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3.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
 

特定疾患に指定され医療費を受給している人の数は、高安動脈炎5,000人、結節性多発動脈炎1,400人、ウェゲナー肉芽腫症670人です。実際の患者さんの数は、この倍くらいと推定されますが、関節リウマチが推定70万人であることを考えれば、いかに少ない病気であるかが理解出来ます。


4.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
 

高安動脈炎:
男女比は1:8で女性に多く、発症時の年令は20〜30才台と若い人に多いのが特徴です。

巨細胞性動脈炎:
60〜70才台を中心に、50才以上の高齢者に多発します。男女差はありません。

結節性多発動脈炎:
発症時の年令は40〜60才台で、欧米では男女比が3:1で男性に多いのですが、日本ではほとんど男女差がありません。

アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群):
成人で発症することが多く、男女差はありません。

ウェゲナー肉芽腫症:
発症時の年令は40才を中心に20〜60才台に分布しています。男女差はありません。

顕微鏡的多発血管炎:
結節性多発動脈炎と一緒に調査されているため、正確なこの病気の特徴がつかめないのが現状です。現在、厚生省の難病調査研究班によって詳しく調べられています。

ヘノッホ・シェーンライン紫斑病:
主として学童期の小児に多く見られる病気です。しかし、成人になってからも発病することがあり、なかには高齢者で病気を起こしたケースも報告されています。


5.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
 

多くの疾患では、その原因が依然として不明です。実際に病気を引き起こすものは、免疫複合体、自己反応性T細胞、自己抗体などの免疫異常によるものです。最近、自己抗体の中の抗好中球細胞質抗体(Anti-Neutrophilic Cytoplasmic Antibody: ANCA)が、血管炎症候群の一部の患者さんの血液中に検出されることがわかり注目されています。ANCAには、PR-3、MPO型などの種類が知られています。ウェゲナー肉芽腫症では、PR-3 ANCAが、顕微鏡的多発血管炎、チャーグ・ストラウス症候群などではMPO ANCAが高率に検出されます。しかし、これらの自己抗体が、実際に病気を引き起こすうえで必要不可欠のものであるかどうかは、盛んに研究されていますが結論は得られていません。

クリオグロブリン血症では、C型肝炎ウイルスがその原因として疑われており、アメリカでの成績ではC型肝炎ウイルスの治療薬であるインターフェロンーアルファが、クリオグロブリン血症による紫斑、腎炎に効いたとする報告があります。

過敏性血管炎では、その一部が、薬剤によって引き起こされることが知られています。痛み止め、 抗生物質などさまざまな薬剤で過敏性血管炎が起きます。しかしこれは、薬そのものの作用によるものではなく、薬を飲んだ人の体質によりますので、その頻度は低いと考えてよいでしょう。自分自身の蛋白成分以外のもの、例えば輸血や人間以外の動物などの蛋白が血液中に入った場合も過敏性血管炎が引き起こされる可能性があります。原因がわからないもの、悪性腫瘍に伴ったものなど、その他にも原因となるものが報告されていますので、なにが原因となっているかを結論するのが難しいケースもしばしばです。


6.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
 

高安大動脈炎を中心に遺伝的な原因が検討されていますが、これまでに確実な遺伝を起こす分子は捉えられていません 。家族で何人も起こるようなこともありません。

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7.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
 

次の二つの症状がこの病気の症状の中心にになります。一つは発熱、全身倦怠感、体重減少などの全身症状で、発熱の多くは抗生物質によって軽快しません。 もう一つは、血管炎症候群の各疾患に特徴的な臨床症状です。これは、障害される血管サイズと関連しています。大動脈、幹動脈の障害では、これら動脈の血流が途絶える阻欠症状がみらます。高安動脈炎では、上腕動脈の閉塞、狭窄によって、手首の動脈拍動が触れなくなる"脈なし"症状が起こります。総頚動脈の障害で失神発作が、また狭窄部位が左右上下に偏っている場合には左右上下の血圧差が出現します。巨細胞性動脈炎では側頭動脈(こめかみにある動脈)が障害され、腫れますので、この部位にしつこい痛みが起ったり、頭痛が起ります。側頭動脈から出た分枝の眼動脈が障害されれば、一時的に目の前が真っ暗になります。太い動脈は、臓器に血液を供給する主要な血管であることから、この障害は臓器の梗塞を引き起こします。脳梗塞、心筋梗塞、腸梗塞などや、末梢神経の栄養血管が障害されると特徴的な多発性単神経炎(左右対称でない全身の末梢神経障害)を呈します。毛細血管、細静脈の障害では、紫斑、皮疹、や関節炎、糸球体腎炎(むくみや蛋白尿、血尿を引き起こす)などが中心となります。


8.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
 

病気の種類にもよりますが、原則として副腎皮質ステロイドが使用されます。この病気の炎症症状を改善するうえでなくてはならない治療薬です。病気の広がり、重さによってその量が異なります。血管炎そのものには、免疫抑制薬が使用されます。この薬剤が使われるようになってから、血管炎のコントロールが良好になりました。特に、中・小の筋型動脈が障害される疾患では、最初から強力な免疫抑制療法が行われます。

これ以外に、症状を和らげる対照的な治療が同時に行われます。血管の流れを改善させる血管拡 張剤や、血栓を作らせないようにする薬剤、血圧を下げる降圧剤などです。

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9.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
 

高安動脈炎:
病気の広がり、病気が見つかった時期によって、その後の病状は大きく変ります。病気が初期に見つかり、片方の手に行く動脈が閉塞した人では、治療によって、その手のシビレを残す程度で安定することもしばしばです。一方、病気が進行して、大動脈や心臓の弁の近くに及んだ場合には、薬の効きも十分でなく、内科的な薬物療法に加えて、手術をしなければならないケースもあります。しかし、十年、二十年前に比べると、格段に治療の成果が上がっています。そのため、患者さんの年齢が高くなり、動脈硬化、糖尿病といった余病に悩まされる人が多くなっています。

巨細胞性動脈炎:
頭痛などの症状で早く見つかれば、入院治療によって病状が安定するでしょう。しかし、眼に行く眼動脈などが完全に詰まってしまえば失明することもありますし、脳の血管、全身の重要な内蔵の血管に変化が及ぶこともあり、慎重に薬物療法を続ける必要があります。

結節性多発動脈炎:
この病気の診断はしばしば困難なことが多く、治療が遅れることの多い病気です。しかも、脳、心臓、腎臓、腸などに栄養を送っている血管を障害しますので、その障害の程度によって病気の様子が変ってきます。心臓では、心筋梗塞へと進展することがあり、重症化します。最近では、薬物療法が進歩し、このような内蔵の病変が進行しない時期であれば、病気の勢いを完全に止めることが出来るようになりました。全く治療しないと、5年生存率(5年間生きられる人の割合)は10%以下でしたが、最近の治療法の進歩で70%程に改善されています。

アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群):
ステロイド剤が比較的効きやすい病気として知られてきました。しかし、シビレ、運動障害などの末梢神経の症状は治りにくいことが特徴で、根気強いリハビリトレーニングが必要になることもしばしばです。この病気の中にも、心臓などの重要な内蔵を障害することが稀にあり、そのような人では病気が長引き重症化することが知られています。

ウェゲナー肉芽腫症:
治療をしないと1年生存率(一年間生きられる割合)は20%とたいへん悪く、平均生存期間は5カ月、2年以内に90%以上が亡くなられる重い病気でした。しかし、結節性多発動脈炎と同じように免疫抑制剤が病気の早期から使用されるようになり、5年生存率がやはり80%程と著明に改善されるようになりました。中には病気が完全に治ってしまう寛解例も見られます。

顕微鏡的多発血管炎:
治療をしないと、急速に腎不全、呼吸不全に至る、重い病気です。最近では、血液検査でこの病気と関連が深いANCAが測定出来るようになり、早い段階で病気の診断が可能になってきました。これらの内臓の障害が軽いうちに見つかれば、強力な薬物療法で病気の勢いを止め、場合によってはそれを改善させることが出来ます。

ヘノッホ・シェーンライン紫斑病:
多くのケースでは、無治療でも数週間から数カ月で軽快します。しかし、紫斑が出現したら安静にして、体をやすめるようにしましょう。腹痛は、痛み止めなど対症的な治療をします。約半数に蛋白尿などの腎障害を引き起こす人がいます。安静だけで軽快することも多いのですが、病状が重ければ、ステロイド剤が使われることもあります。

過敏性血管炎:
発熱、皮膚症状、関節症状などは、ステロイド薬で軽快することが多いのですが、臓器病変として、腎炎、肺炎、心不全などを伴えば病状は重く、最悪の場合には亡くなられることもあります。しかし、治療が奏効すれば、何の障害もなく完治するケースもあります。

膠原病に合併する血管炎:
障害される血管が細い場合には、ステロイド薬や免疫抑制薬で軽快することも多いのですが、皮膚の大きな潰瘍などは、治りにくいことも多く、安静や、皮膚科的な治療も必要になります。内蔵を支配するものに及ぶと、病状は重くなり、重症化します。

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10.よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)
  Q1: 血管炎症候群で治療中です。日常生活で注意することは、ありますか?
  A1: 血管炎では、血管に炎症を起こし、血管の壁が弱くなったり、硬くなったりという変化を起こしやすいと考えられます。これ以上血管に負担をかけない様、動脈硬化などの危険因子には、くれぐれも注意しましょう。喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高い状態)、高尿酸血症などに気をつけましょう。また、風邪やけがなどのストレスは、病状を悪化させる誘因になりますし、服用している薬によって肺炎や、けがの回復が遅れるなどの問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。寒さによって血管が収縮し、血流が悪くなることがあります。また、クリオグロブリン血症のように、寒冷刺激で病気が誘発されることがありますので、防寒にはくれぐれも気をつけましょう 。

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