強直性脊椎炎

1.強直性脊椎炎とは?
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
6.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
7.診断はどのようにしますか?
     また、どんな検査が必要ですか?(診断、検査)
8.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
9.この病気の新しい治療薬について教えてください。(新規治療薬)
10.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
11.日常生活で気をつけることはどんなことですか?



1.強直性脊椎炎とは?
 

強直性脊椎炎は英語でankylosing spondylitisといい、その頭文字をとりASといわれます。脊椎(背骨)や仙腸関節(仙椎と骨盤との間にある関節)、股関節や肩の関節などに炎症(痛みや腫れなど)が起こるいくつかの病気をまとめて脊椎関節炎と呼びますが、強直性脊椎炎はその中の代表的な病気です。踵など腱が骨につく部分に付着部炎と呼ばれる炎症がみられるのも脊椎関節炎の特徴です。強直性脊椎炎は、進行すると名前のとおり脊椎の間に強直(固まってつながる)がみられるのが特徴です。病気の原因は明らかではありませんが、この病気ではヒト白血球抗原であるHLAのうち、ある特定の遺伝子型(HLA-B27)をもつ人が多いことが知られています。


戻る


2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
 

この病気を発病する率は、人種により異なっています。ドイツでは成人の1%に発病し、関節リウマチと同程度の率といわれていますが、一般的に白人では0.5%、日本人ではその10分の1以下であると考えられています。HLAとはヒト白血球抗原のことで、それぞれの人が異なった型のHLAをもっています。HLA-B27はそのなかのひとつの型であり、強直性脊椎炎の患者さんはこの型をもつことが多く、病気との関連性が考えられています。しかし、日本人ではHLA-B27をもつ人は少なく、強直性脊椎炎も欧米に比べて稀です。一方で、中国・韓国人には日本人と比較してHLA-B27をもつ人が多く、病気の率も高いことが知られています。

食べ物や環境などでこの病気に関係しているものは知られていません。


 

3.この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
 

この病気は、HLA-B27をもつ人に発症することが多いといわれ、海外では90%以上の患者さんがHLA-B27陽性とされています。発病の年齢は10歳から35歳と思春期、青年期に多く、45歳以上で発病することは希です。男性に多い病気ですが、女性にも起こります。


戻る


4.この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
 

多くの研究者が様々な研究を行っておりますが、残念ながら今のところ原因はわかっていません。ヒト白血球抗原HLAの特定の遺伝子型、HLA-B27との関連性が以前より注目されています。しかし、HLA-B27以外のHLA型の患者さんもいること、病気を起こすのはHLA-B27をもつ人の中でも一部であることから、HLA-B27だけでは病気の原因が説明できません。腸管などの細菌の感染が発病の引き金になっている可能性などが考えられていますが、明らかにはなっていません。



5.この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
 

遺伝子が原因ではないので、遺伝する病気ではありません。

HLA遺伝子は、ある型が両親とも陽性の場合は100%、片親が陽性の場合は50%の確率でこどもに引き継がれます。この病気に多いHLA-B27が陽性の家系の場合、家族内での発病が見られることがあります。しかし、HLA-B27陽性でも多くの場合(80%以上)、一生この病気を発病することはありません。よって通常は、親がHLA-B27をもち強直性脊椎炎があったとしても、脊椎関節炎を疑わない限りこどもがHLA-B27をもっているかどうかを検査する必要はありません。

戻る


6.この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
 

この病気では脊椎や四肢の関節、その中でも特に基となる部分である腰椎や仙腸関節(腰の下方にある)が侵されます。したがって腰痛や殿部の痛みで発病することが多いのですが、単なる腰痛症や坐骨神経痛と間違われることがあります。痛みは急でなく徐々に潜行します。適度な運動をすると痛みが楽になり、動かさないでいると悪くなるのが特徴で、夜間や朝方に強い痛みが起こります。また、症状に波があるのも特徴で、激痛が数日続きその後は痛みがほとんどなくなることもあります。痛みは脊椎や仙腸関節での炎症により起こるため、抗炎症薬(消炎鎮痛剤)が効果を示します。

股関節、肩関節など脊椎に近い関節に関節炎が起こることも多く、進行すると骨の破壊が起こります。また腱が骨につく部位(アキレス腱が踵につくところなど)に炎症が起こり付着部炎と呼ばれます。

また、この病気では脊椎が硬く動かなくなりますが、骨自体はむしろ炎症により弱くなり、骨粗鬆症が起こってきます。

脊椎や関節以外では、眼の急性の炎症(虹彩炎)が3分の1程度の患者さんでみられます。全身的には、初期には体重減少、疲労感、発熱、貧血などがみられます。炎症が強い時期には、血液検査で炎症の反応であるCRP、赤沈の値が高くなります。

ある程度進行すると、仙腸関節や脊椎のレントゲン検査などから診断が可能です。

 

7.診断はどのようにしますか?またどんな検査が必要ですが?(診断、検査)
 

若年者で、徐々に進む腰痛があり、運動でよくなるような場合には、強直性脊椎炎などの脊椎関節炎を疑います。血液検査では、炎症を反映するCRPの上昇がみられることが多く、参考になります。関節リウマチでみられるリウマトイド因子は陰性です。HLA-B27の有無をみるためHLA遺伝子型の検査がしばしば行われますが、残念ながら保険収載はされていません。画像検査として、仙腸関節や脊椎のX線や、必要に応じてCT、MRIなどの検査を行います。現在、早期にこの病気を診断するため、海外でいくつかの診断基準が提唱されており、それらも参考にして診断を行います。

戻る

 

8.この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)

 

残念ながら、今のところ根本的な治療法はありません。しかし、TNF阻害薬という注射製剤が痛みや炎症に対して強い効果を示すことがわかり、2010年に日本でも強直性脊椎炎に対して保険適応となっています。

強直性脊椎炎の治療は、薬物療法と運動・理学療法が中心です。

定期的な運動・体操は姿勢や背骨の動きを保ち、痛みを和らげて運動機能を促進します。入浴やシャワーで体を温めたり、その後にストレッチを行うことにより関節の動きがよくなります。可能であれば水泳(特に温水プール)が理想的な運動といわれています。背骨を伸ばす運動や深呼吸運動も勧められます。いずれにせよ個人に適した強さの体操や運動を、無理せず継続して行うことが重要です。

薬物療法は、痛みに対して行われます。消炎鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬がよい効果を示します。痛みをとり、運動や体操ができるようにするのは重要です。最近は胃腸への影響が少ないCOX-2阻害薬と呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬がよく使われるようになってきています。脊椎以外の関節炎に対しては、スルファサラジン(商品名アザルフィジンEN)という関節リウマチの治療薬が用いられます。ステロイド薬は主に関節局所への注射薬として使用されます。ステロイドの長期間の内服は、効果に乏しく副作用がみられるため、推奨されていません。この病気は骨が脆くなる骨粗鬆症を伴いやすく、骨粗鬆症に対してはビスフォスフォネート製剤と呼ばれる薬剤がよく使用されます。

非ステロイド性抗炎症薬で効果が不十分な脊椎の症状に対しては、TNF阻害薬の適応があります。

脊椎を動くようにする手術はありませんが、後弯(前屈)変形が強く前を見られなった場合に、脊椎を伸ばして固定する手術が行われることがあります。進行した股関節や膝関節の障害に対しては人工関節置換術が行われ、よい成績をおさめています。


 

9.この病気の新しい治療薬について教えてください。(新規治療薬)
 

TNFαという物質が脊椎や関節で過剰につくられ、この病気の痛みや炎症を引き起こしている大きな原因のひとつであることがわかってきました。TNFαとは、tumor necrosis factor-α(腫瘍壊死因子)の略で、サイトカインと呼ばれる免疫や炎症に関与するたんぱく質のひとつです。

最近、生物学的製剤といわれる、抗体や受容体などヒトの成分を生物学的な手法で人工的につくった薬剤が様々な病気で使われています。強直性脊椎炎においても、TNFαを阻害する生物学的製剤であるインフリキシマブ(商品名レミケード)やアダリムマブ(商品名ヒュミラ)が保険適応となっています。インフリキシマブは点滴(1回2時間、主に6-8週間隔)で、アダリムマブは隔週に皮下注射で投与します。日本での治験(適応承認のための臨床試験)では、両薬剤ともほとんどの患者さんで何らかの痛みの改善効果が認められています。

これらの薬剤の副作用として感染症が起こる可能性があるため、投与前に血液や胸部の画像検査、ツベルクリン反応などを行い、安全に投与できるかチェックします。過去に結核の感染が疑われる場合には抗結核薬をしばらく内服しながら投与します。投与開始後も定期的に検査を行うことでより安全な投与が可能となります。インフリキシマブやアダリムマブなどTNF阻害薬で治療中に発熱や咳・痰などがみられたら、早めに受診するようにしましょう。

戻る

10.この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
 

数年以上かけて徐々に脊椎の強直が起こり、背骨の動きが制限されます。それに伴って前に屈んだり、背中をひねったり傾けたりするのが困難になってきます。ただし病気の進行の程度には個人差があり、強直してないか、しても一部のみの軽症型から、全部の脊椎が強直する重症型まで様々です。新しい治療薬であるTNF阻害薬が強直を抑えるかどうかについては今のところわかっていません。


 

11.日常で気をつけることはどんなことですか?
 

大切なことは、日常の適切な運動・体操です。進行した場合は、靴の選択や手すりの設置など転倒を予防する対策が必要です。夜間、脊椎が前屈(屈曲)しないように、ベッドは固い方が好ましいとされています。この病気では胸の拡張制限も起こりますので、呼吸機能を低下させる喫煙は避けましょう。脊椎の骨折は、脊髄(神経)損傷を生じることがあります。けがや交通事故に十分注意してください。

日本AS友の会ホームページ

http://www5b.biglobe.ne.jp/~asweb/index.html

戻る

 

【情報更新日】平成22年12月1日

 


トップへ