平成22年度日欧リウマチ外科交換派遣医

 

TOKYO

東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 整形外科教授
桃原茂樹

ヨーロッパでリウマチ外科を専門としたEuropean Rheumatism and Arthritis Surgical Society (ERASS)と日本リウマチ財団との間で平成11年から日欧リウマチ外科交換派遣医制度が設けられています。これは隔年に日本とヨーロッパとの間で交換派遣が行われるもので、平成22年度はヨーロッパから2人のリウマチ外科医が日本に来られました。

今回来日されました外科医は、フランス リールからProf. Christian Fontaineと、オーストリア ウィンからDr. Erdal Cetinのお二人です。都合2週間の日本滞在でしたが、前半1週間は東京に滞在されました。東京でのホスト役を私が承りましたので、東京での研修についてご報告させていただきます。

8月28日(土)Prof. Christian Fontaine来日
8月29日(日)Dr. Erdal Cetin来日

8月29日(日)の夜、滞在先のホテルで待ち合わせをしてから日本的情緒溢れるお店で初めて食事をご一緒しました。お二人とも紳士的でとても温かみのある人柄であることが分かり、日本、フランス、オーストリアでの医療事情や各自の趣味などに話を咲かせました。

 

8月30日(月)31日(火)9月2日(木)
東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 

8月30日(月) 毎週月曜日午前7時15分から始まる定例のモーニングカンファレンスに参加していただき、医局員全員と挨拶した後にカンファを行いました。その後、病棟に移り入院患者さんのプレゼンや回診にも同席していただきました。午後からは手術室に移動し、関節リウマチ症例の足趾中足骨々切り術に立ち会っていただきました。
その後の31(火),9/2(木)の両日ともわれわれのセンター整形外科で、リウマチ症例に対する人工指関節、人工肘関節、人工肩関節などの手術に立ち会っていただき、お互いの術式や工夫について情報を交換しました。
 
また初日の8月30日(月)17時より東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター2階会議室でsmall meetingを開催致しました。以下が当日の内容です。
Dr. Takuji Iwamoto (Japan): Rheumatoid Hand and Rheumatoid Wrist
Dr. Erdal Cetin (Austria): Rheumatoid foot
Prof. Yoshiharu Kato (Japan): Atlantoaxial subdislocation in RA
Prof. Christian Fontaine (France): Total elbow arthroplasty and Wrist fusion in RA
議論が尽きず、予定より大幅に時間が超過致しましたが、とても実りの多い会合でした。
Prof. Christian Fontaine
Dr. Erdal Cetin

 

9月1日(水)東京大学整形外科

東京大学整形外科にて田中栄准教授ご指導で研修 。

 

9月3日(金)帝京大学整形外科/理事長表敬訪問

帝京大学整形外科にて西村慶太教授、黒島永嗣教授のご指導で研修されました。そして同日の夕刻、日本リウマチ財団髙久理事長の元に表敬訪問致し、その後次の目的地である関西に移動致しました。

以上が東京滞在での大まかな内容です。日本リウマチ財団とERASSとの日欧交換派遣が始まって10年以上が経過しました。その間、リウマチ外科を専門とする多くの医師が日本とヨーロッパとの間の架け橋となり、それぞれの医療を学んでまいりました。私も平成11年この交換派遣の第1回目に4週間欧州の国々の病院を訪問させていただき、非常に得がたい貴重な体験をさせていただいております。そこでの経験がその後随分役に立っております。関節リウマチに対してはパラダイムシフトと呼ばれるように薬物療法が飛躍的に発展しました。しかし、それでも関節破壊が進行する例も少なくなく、total managementの一つとして外科的治療は依然として必要とされています。ですから、この日欧交換留学が今後も継続されることを心から願って止みません。

 

OSAKA

独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター
免疫疾患センター 橋本 淳
(平成22年9月時点 大阪大学整形外科)

9月4~11日の1週間大阪大学整形外科で担当させていただきました。日本の人工関節製造企業もみていただくのもよいのではないかという委員会の前向きな方向性に従い、今回は企業見学としてナカシマメディカルプラントツアーを1日入れたことが大きな特徴でありました。また、これまで同様に多施設の見学により多くの医師との交流がはかれるようにする方針を踏襲し大阪大学だけではなく、中川夏子先生、居村茂明先生のご協力のもと甲南病院加古川病院も訪問いたしました。合計5件の手術をみていただくとともに手術の細かい術式にまで情報交換を行うことができとても有意義でありました。

 

9月6日(月)9月7日(火) 9月9日(木)
大阪大学整形外科

9月6日(月)
Christian Fontaine(手指変形の再建)、Erdal Cetin(足部病変治療の考え方)、平尾 眞(光造形カスタムメイドジグを用いた人工足関節置換術)、史 賢林(人工足関節置換術の中期成績)、橋本 淳(骨伝導に優れた人工骨を用いたリウマチ関節の手術)の内容で発表を行いながら、リウマチ関節外科に関しての意見交換を行いました。


9月7日(火)
前日のミーティングで紹介した「人工足関節手術の工夫」および「人工骨を用いた治療」を実際の手術でみていただきました。
<手術1>人工足関節置換術(RA)
<手術2>肘頭骨内嚢胞に対する掻爬、人工骨(NEOBONE)移植術(RA)

9月9日(木)大阪大学
<手術3>前足部中足骨短縮矯正骨きり術(RA)第I-V趾中足骨頭温存
<手術4>母指CM関節形成術(Kaarela法)+MP関節Swanson人工関節(RA)

 

9月8日(水)ナカシマメディカル株式会社 プラントツアー 

ナカシマメディカル関連の施設3カ所、ナカシマプロペラプラント(玉島工場)、ナカシマメディカル人工関節製造工場、研究所を移動して見学しました。巨大プロペラ製造行程、各種人工関節、新規の人工材料の紹介に、担当者に様々多くの質問を投げつつ興味を持って見学が行われました。

 

9月10日(金)甲南病院加古川病院

居村茂明前院長自ら院内を回りながら施設をご紹介いただき、日本の病院の診察の流れ、プール療法の施設などみていただくことができました。
中川夏子先生の手術を見学させていただきました。
<手術5>人工肘関節置換術Coonrad-Morley(RA)

お二人共、関節外科の知識と考察も豊富なだけでなく非常に気さくで、学問的にも文化的にも大いなる交流をはかることができました。

        

 

 

 

 


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