国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表
ヨーロッパリウマチ学会(EULAR2014) 報告書

 

氏名

所属

蔭山  豪一

神戸大学医学部附属病院 膠原病リウマチ内科 助教

藤岡 数記

京都府立医科大学大学院 免疫内科学教室 大学院生


 蔭山  豪一   
 神戸大学医学部附属病院 膠原病リウマチ内科 助教

このたび、2014年6月11日から14日までフランス パリにて行われたEULAR 2014に参加するにあたり、日本リウマチ財団から「国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する助成」を賜りましたのでご報告申し上げます。
 
今回私は、1) Salivary metabolomics of primary Sjögren’s syndrome 2) Ineffective fracture prevention by bisphosphonate in patients undergoing high dose glucocorticoid therapy with a FRAX ten year probability greater than 9.3%の2演題をポスター発表させていただく機会を得ました。
 
一つ目の演題は原発性シェーグレン症候群の唾液中に含まれる代謝産物プロファイルをガスクロマトグラフィー=四重極質量分析器を使用し解析し健常人と比較したものです。シェーグレン症候群患者群においては健常人と比べて、唾液中の代謝産物プロファイルは多様性を失っていること、大唾液腺炎の有無によっても代謝産物のプロファイルは変化することを報告しました。まだ、端緒についたばかりの研究ではありますが、多くの方々からの質問を受け有意義なディスカッションを行えました。
 
二つ目の演題は、当院でステロイド大量療法(PSL>0.8mg/kg/日) を受けた患者を解析し、ステロイド大量療法の重要な副作用である脆弱性骨折と、ビスフォスフォネート製剤の骨折予防効果を検証した後ろ向き研究です。観察期間の中央値は約5年間で131人に閉経後女性と40歳以上の男性131人を対象に解析を行いました。結果は51人(38.9%)と驚くべき数の脆弱性骨折が発生していることがわかりました。しかも、ビスフォスフォネート製剤を内服していているにもかかわらず、骨折した患者が32人も存在すること、さらにステロイド投与開始時のFRAXの値が9.3%を超えるとビスフォスフォネート製剤を内服していても骨折するリスクが高くなるという内容でした。後ろ向き研究であり多くの限界があるものの、ステロイド大量療法による脆弱性骨折の頻度の高さと、脆弱性骨折の予防として現在の治療ではまだ不十分と言わざるをえないことを認識させられる結果でありました。
 
EULARは、リウマチ学に関する最新の話題が世界中から集まる最高の学会です。そこに行けば、話題のトピックをいくつも得ることができます。しかし、私がEULARに参加した中で、今回最も感銘をうけたのは、EULARに参加している世界中の様々な人々のリウマチ性疾患の制圧にかける情熱でした。
私も甚だ微力ではありますが、臨床医としてより良い医療を提供することで、今回賜りましたご厚情を還元したいと考えております。
 
最後に、今回の学会参加にあたり御支援いただきました日本リウマチ財団の髙久史麿代表理事および関係者の皆様に深謝いたします。

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  藤岡 数記  京都府立医科大学大学院 免疫内科学教室 大学院生

この度は、国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表助成を賜ることとなり、平成26年6月11日より4日間の日程でフランスのパリで開催されましたヨーロッパリウマチ学会(EULAR2014)に参加・発表させて頂きましたので、ここに報告させて頂きます。

出発3日前にEULARから6月10日~11日とフランス全土で鉄道とTaxiのストライキがあるので注意するように、とのメールアナウンスがあり果たして無事にパリ市内に到着出来るのか不安の中出発したのですが、定刻よりも飛行機が早く到着したこともありストライキには掛からず無事に市内へ到着することが出来ました。パリの街並みは非常に美しく、また世界遺産等も至る所にあり素晴らしい環境の中での学会であったと思います。

今回私は「Directly reprogrammed osteoblasts genetically engineered to produce interleukin-10 significantly suppress osteoclastogenesis」というテーマで発表を行いました。Direct reprogrammingとは目的の細胞の分化に主要な役割を有する転写因子を線維芽細胞等の体細胞に導入することで、iPS細胞を介さずに直接それらの細胞に変換できるという技術であり、近年再生医療の分野でiPS細胞と並び中心となっている話題の1つです。このDirect reprogrammingにより皮膚線維芽細胞から骨芽細胞を誘導し、さらにその骨芽細胞に抗炎症性サイトカインであるIL-10を産生するような機能も併せ持たせると関節リウマチ(RA)における骨破壊の修復と炎症の制御の2つを同時に達成出来るのではないかと考え実験を行いました。

実験の結果、マウス線維芽細胞に骨芽細胞のマスター因子であるRunx2とIL-10の遺伝子を導入し、分化培地で培養したところ非常に効率的に石灰化骨基質を産生し、多量のIL-10を分泌する骨芽細胞を誘導することが出来ました。この細胞はRANKLによる破骨細胞分化やマクロファージからの炎症性サイトカイン産生を抑制することが可能であることが分かり、実際のRAに対する新たな治療法となりうると考えられたため、その効果について考察を行い今回ポスターで発表をさせて頂くこととなりました。

残念ながら同様のcell reprogrammingに関する研究報告は決して多くはなかったのですが、会場では様々な国の研究者に発表を見に来て頂け、多くの建設的な議論を交わすことができました。特にヒトの細胞で可能であるのか、また実際に臨床応用する場合の方法としてはどういった手段が考えられるか、という質問を多く頂き、今後の研究の方向性・課題を考える上で大きな参考となりました。

最後になりましたが、今回の学会での研究報告に対し多大なるご支援を日本リウマチ財団より頂きましたことを深謝申し上げたいと思います。

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