国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表
アジア太平洋リウマチ学会(APLAR2014) 報告書

 


中村 彰宏   国立病院機構九州医療センター膠原病内科レジデント

 この度、日本リウマチ財団による国際学会における助成を賜ることとなり、2014年3月31日より5日間の日程でフィリピンのセブ島で開催されましたアジア太平洋リウマチ学会(APLAR 2014)に参加させていただきました。
往路は福岡よりマニラ経由でセブ入りしたのですが、マニラからセブまでの国内線の出発が非常に遅れ、ホテルに着いたのが深夜1時という国際学会ならではのハプニングから始まった学会でした。しかし、非常に楽しみにしていたAPLARでしたので、次の日の疲労は全くなく、非常に有意義な時間を過ごすことができました。 
 私は4月4日のポスターセッションにて”Cytomegalovirus Infection in Rheumatic Diseases” の臨床研究を報告させていただきました。ステロイドや免疫抑制剤を多用するリウマチ膠原病疾患において、CMV感染症は日常よく経験する感染症であり、今回私は当科における過去10年間のCMV感染患者の解析を行うことによりその罹患率と死亡率に関係する因子を同定することを目的としました。研究の結果、罹患率に最も大きく寄与した因子が過去1年間のステロイド使用量であり、死亡率に関与したものが既存の間質性肺炎の存在、低アルブミン血症、低γグロブリン血症、CMV肺炎を起こしていることでした。ポスターの前では海外の臨床医の方から質問を受け、非常に刺激的であり、私も海外の演者の先生方に積極的に質問し、Discussionできたことが何よりも貴重な経験となりました。
 シンポジウムやワークショップでは、日本からも多くの著名な先生方がご発表され、アジアにおけるリウマチ学発展に日本が多大な業績を残していることを直に感じることができ、日本人として誇りに思うとともにこれからの自分の励みとなりました。
 少し脱線しますが、私が宿泊したホテルと会場まではタクシーで20分ほどの距離にありました。タクシーの中で見たフィリピンの人々の生活は決して裕福とは言えず、痩せ細った子供たちが何度も信号待ちしているタクシーに近寄り、「お金を恵んでくれ」と窓をたたいてきました。この光景を目の当たりにし、自分が今日本で何不自由なく生活できていることがどれだけ幸せなことかと痛感するとともに、世界中には満足に食事も食べれない子供たちがたくさんいることに胸が痛みました。このような厳しい社会情勢を肌で感じたことも、私にとっては今後の人生に大きな影響を与える、国際学会でしか経験することのできない出来事となりました。
 最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えてくださった日本リウマチ財団委員の先生方、推薦者の宮原寿明先生、同僚の児玉尚子先生、事務局の皆様にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。



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