国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する 助成者報告書(ACR 2022)

昭和大学医学部内科学講座リウマチ膠原病内科学部門 若林 邦伸

 

「The subsets of synovial fluid derived fibroblasts in clinical features of rheumatoid arthritis」の演題をバーチャルポスターで発表した。

関節リウマチ (RA) の滑膜線維芽細胞は、炎症性サイトカインやケモカインを分泌し、軟骨を破壊するパンヌスを形成する。ポドプラニン (PDPN) 発現を特徴とする滑膜由来の線維芽細胞には、機能的に異なる 3 つのサブセット(CD34THY1,CD34THY1,CD34THY1)が存在する。また、関節液由来の線維芽細胞の表現型および機能的特徴は滑膜由来の線維芽細胞から逸脱しないことが報告されている。今回、関節液由来のPDPN線維芽細胞を構成するサブセットと継代による変化をフローサイトメトリーで分析し、臨床像との関係を検討した。

初代培養されたPDPN線維芽細胞において、CD34THY1とCD34THY1サブセットの割合が高く、CD34THY1サブセットは初発群と血清反応陰性群で高くなり、CD34THY1サブセットは再燃群と血清反応陽性群で高くなることが明らかになった。また、継代培養するとPDPN線維芽細胞は増加し、そのうちCD34THY1とCD34THY1サブセットが増加すること、特に再燃群で統計学的有意差をもって増加することが分かった。これらの結果から関節液由来線維芽細胞を構成するサブセットの違いと臨床像に関係があることが示唆された。

RA患者の臨床像は多様で治療反応性は患者により異なる。治療反応性と関連する因子の同定のため、今後も引き続き研究を進めていきたい。

学会を通して、自分の研究の参考になる研究発表に触れることができた。また、免疫抑制療法をしている患者へのワクチン接種ガイドラインやステロイド誘発性骨粗鬆症の予防と治療のためのガイドライン、抗リン脂質抗体症候群やピロリン酸カルシウム結晶沈着症の新たなACR/EULAR分類基準のドラフトが発表され、日常診療につながる知見を得ることができた。学会参加に際し日本リウマチ財団よりご支援を賜りましたことに深謝申し上げます。