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昭和医科大学内科学講座リウマチ膠原病内科学部門 猪狩 雄蔵

「Association of levels of soluble CD13 with clinical features and fibrosis in systemic sclerosis patients」という演題でポスター発表を行いました。

可溶型 CD13(sCD13)は MMP14 による切断を介して遊離され、炎症や線維化に関与することが報告されています。本研究では、血漿中 sCD13 が全身性強皮症(SSc)の臨床像とどのように関連するかを明らかにすることを目的とし、SSc 患者における血漿 sCD13 値および関連遺伝子の発現を検討いたしました。

 その結果、sCD13 はびまん皮膚硬化型 SSc において有意に高値を示した一方、血管病変との関連は認められませんでした。発症早期の患者群では、sCD13 高値群において 1 年後の mRSS の減少量が大きい傾向がみられ、線維化の変動に一定の関与が示唆されました。さらに、遺伝子発現解析では ANPEP(CD13)、MMP14、F2RL3(PAR4)が上昇し、TGF-β1 や IL-6 と有意な相関を示しました。これらの結果から、炎症性サイトカインにより誘導される MMP14–CD13–PAR4 経路が、血中 sCD13 の上昇および線維化の調節に寄与する可能性が示唆されました。

学会期間中は、強皮症研究の最新の成果に触れるだけでなく、多くの研究者の方々と意見交換や議論を行う貴重な機会にも恵まれ、臨床に直結する重要な知見を数多く得ることができました。日本リウマチ財団よりご支援を賜り、このような国際学会において発表の機会をいただけましたことに、心より深謝申し上げます。

 

京都大学大学院 医学研究科 臨床免疫学 小川 惇史

令和7年10月24日から29日にかけて米国イリノイ州シカゴで開催されたAmerican College of Rheumatology Annual Meeting 2025(ACR2025、2025米国リウマチ学会年次集会)にて「Role of autoantigen-specific reactivity in the pathogenesis of murine interstitial lung disease model with anti-MDA5 antibody mouse model」というテーマでポスター発表を行いました。今回の発表にあたり令和7年度日本リウマチ財団国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員の先生方はじめ、財団関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

 抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は急速進行性の間質性肺炎(RP-ILD)を合併することが多く、その場合予後不良となる症例が多いことが知られており、特にアジア人で有病率が高いとされております。現在治療法としては高用量グルココルチコイド、シクロフォスファミド、カルシニューリン阻害薬の3剤併用療法が予後を改善することを当科より報告しましたが、依然として治療抵抗性や合併症に伴う感染症のために亡くなる症例が少なくありません。急速に進行し致死性の高い病態についてまだ未解明な部分が多く、治療法についても実臨床では検討が難しい現在の環境下で我々はマウスモデルの樹立と病態解明をすすめており、今回肺炎病態に対してMDA5特異的なリンパ球の関与について発表いたしました。

 ACRでは口頭発表のほかにほぼすべてのポスター発表を回りましたが、白人においてRP-ILDの発症は少ないためか抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の研究が少なく、我々のポスターもむしろ日本をはじめとしたアジア人の閲覧者が多い印象でした。アメリカ本国より発表されていたグループの研究者とお互いの発表閲覧と質疑応答を重ねることができ、我々の研究は国外を含め先駆けた研究になるのではないかと期待が持てました。一方で他領域のテーマの研究にはなりますが日本国内では実施が難しいと思われるほどの研究サンプルの数に対して(コスト的な意味も含めて)高い質の解析をすすめている研究が多く、国外での研究における規模の差および研究資金力を感じました。

 ACRの期間中は自大学の基礎の研究室および国内の他大学の先生ともお話しする機会があり、海外留学の意義も含めて今後の研究生活における様々なアドバイスも頂戴し、これも国際学会参加の一つの成果となりました。

最後に、貴財団からのご支援は非常に大きな支えとなりとても有意義な国際学会参加を実現することができました。重ねて厚く御礼申し上げます。

 

国立健康危機管理研究機構 原田 拓弥

このたび、令和7年度日本リウマチ財団「国際学会におけるリウマチ性疾患調査研究・研究発表助成」を賜り、誠に有難うございました。ご評価頂きました選考委員の先生方、財団関係者の皆様、ご推薦頂きました国立健康危機管理研究機構 國土典宏理事長にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。

 本助成を受け、令和7年10月23日から10月29日まで渡米し、2025年アメリカリウマチ学会総会(ACR Convergence 2025)で研究発表を行いました。開催されれたシカゴの街は歴史的建造物が多く、現地の文化からは誇り高さと寛容さを感じました。

 私は国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センターならびに国府台医療センター、徳洲会野田総合病院、蛍水会名戸ヶ谷病院でおおよそ700名のリウマチ膠原病かかりつけ患者様の臨床診療を担当させて頂いております。並行して、特発性炎症性筋疾患の病態機序について研究を行っております。臨床で得られる視点、研究で深められる考え方は相互に有用なものであると感じております。

 今回、「Single-cell and Spatial Transcriptomic Profiling of Muscle Reveals Inflammatory Mechanisms in Anti-glycyl tRNA Synthetase Syndrome」というテーマで発表を行いました。特発性炎症性筋疾患の一群である抗合成酵素症候群の病態において、マクロファージは重要な役割を果たすと考えられております。そこで、単一細胞・空間トランスクリプトミクスを用いて、本病態におけるマクロファージの活性化分子ネットワーク及びそのハブ遺伝子を探索し、公開データセットで検証を行い、検出したハブ遺伝子の重要性を報告しました。なお、本研究はAMED創薬基盤構築事業「ナショナルセンター・バイオバンクネットワークを基盤とする疾患別情報統合データベースを活用した産学官連携による創薬開発(GAPFREE4)」の成果をもとに実施致しました。ナショナルセンター・バイオバンクネットワークの後藤雄一先生、国立国際医療センター膠原病科診療科長の金子礼志先生、ご指導ご支援を賜りました全ての皆様に、改めて深く感謝申し上げます。

 今回の発表を通して、会場でのディスカッションから新たな視点を得ることができました。また、本学会には国立国際医療センター出身の先輩方が多く参加されており、貴重な再会のひとときを共有することができました。

 特発性炎症性筋疾患は重症例や易再燃例、悪性腫瘍の合併例があり、リウマチ膠原病疾患の中でも難病の一つと実感しております。いつの日か患者様方の診療に成果を還元することができるよう、引き続き臨床と教育・学習、研究に努めて参ります。このたびは貴重な機会を賜り、誠にありがとうございました。