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横浜市立大学附属市民総合医療センタ 安達 聡一郎

この度は, 国際学会発表助成に採択いただき, 誠にありがとうございました. 2025年9月4日〜8日に福岡で開催されたTheAsiaPacificLeagueofAssociationsforRheumatology(APLAR)2025において、 「Elevated Skin Sodium as a Potential Disease Biomarker in Psoriatic Arthritis」という演題でポスター発表を行いました。

本研究は、 乾癬性関節炎(PsA)患者の皮膚ナトリウム蓄積を23Na MRIで評価し、 皮膚Na量と臨床パラメータの相関を検討したものです. 既報において高ナトリウム環境がTh17細胞の病的分化を促すことが知られており、乾癬皮膚におけるNa蓄積と炎症活動性の関連が注目されています。 我々の検討では、PsA患者群の皮膚Na濃度は健常者に比べて有意に高く、さらに血清CRPやMMP-3が低値でもNa蓄積が観察されました。これらの結果から、23Na MRIによる皮膚Na測定は潜在的な炎症活動性を検出する新たな非侵襲的指標になりうることが示唆されました。

学会では、 炎症病態を画像的に可視化するという点に多くの研究者が関心を寄せ、「皮膚Na量をどのように定量化しているか」「他の免疫疾患でも同様の変化が見られるか」といった質問を多数いただきました。 主にアジア圏の研究者とのディスカッションを通して、画像検査と免疫学を横断するアプローチに国際的な広がりがあることを実感しました。

本助成金は、 渡航費の一部として活用させていただきました。国際学会での発表を通して、自身の研究を広い視野から見つめ直す機会を得ることができましたことに、改めて深く感謝申し上げます。

今後は、PsA患者における皮膚Na蓄積の縦断的評価や、治療反応性との関連を明らかにする前向き研究を計画しています。さらに, PsA以外の膠原病にも応用を拡げ、「炎症をナトリウムで見る」という新たな診断学的視点を確立していきたいと考えています。


川崎医科大学 基礎医学 免疫学教室 坂本 祐真

研究課題名:Somatic UBA1 mutations, the gene responsible for VEXAS syndrome, elicit inflammatory response by enhancing cell death

報告の概要

 2025年9月3日~7日に開催された、第27回アジア太平洋リウマチ学会(APLAR 2025)において、申請者らはポスター発表により研究成果を報告した。 演題名は「Somatic UBA1 mutations, the gene responsible for VEXAS syndrome, elicit inflammatory response by enhancing cell death」であり、2020年末に提唱された新規の自己炎症性疾患であるVEXAS症候群を対象とし、その病態解明および新規治療開発を目的として実施した研究である。 本研究は、(公財)日本リウマチ財団 令和5年度リウマチ性疾患調査・研究助成のご支援により実施したものであることをここに明記する。

申請者らは、独自に作製した本疾患モデル細胞を解析した結果、本疾患の責任遺伝子であるUBA1変異を有する細胞では、細胞死が亢進し、それに伴ってDAMPs (Damage-Associated Molecular Patterns) 放出が増加することで炎症反応が惹起されることを見出し、本成果をポスター発表にて報告した。

発表当日は、日本を含むアメリカ、フランス、台湾、フィリピン、シンガポール、インドなど多様な国の研究者・臨床医と、本研究内容について議論をおこなった。 その中で明らかになったのは、VEXAS症候群は病態が未解明でかつ長期予後不良であるため国際的に高い注目を集めている一方、リウマチ内科医であっても疾患自体を知らないケースもあり、認知度に大きな差があるという点であった。

また、本研究に強い関心を示し、共同研究を希望・提案する研究者も存在した。今回の学会発表は、成果の発信や討議にとどまらず、今後の研究発展へとつながる新たな交流の機会を得ることができ、極めて有意義なものであったと言える。

最後に、本研究の遂行および国際学会における研究発表に対する助成をいただいた(公財)日本リウマチ財団に、心より深く感謝を申し上げる。

 

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻 浜﨑美和

 この度は、令和7年度日本リウマチ財団国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する助成をいただき、誠にありがとうございました。ご評価を頂きました選考委員の先生方をはじめ、財団関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

 私は、令和7年9月3日から7日に福岡県で開催されました、アジア太平洋リウマチ学会(APLAR)に出席し、「Oral Environment and Self-Efficacy for Brushing Behavior in Patients with Rheumatoid Arthritis and Sjögren’s Disease: A Cross-Sectional Study」の演題でポスター発表を行いました。

 関節リウマチ患者は、健常人に比べて歯周病罹患率が高く、口腔内環境の不良が歯周病や関節リウマチの疾患活動性を悪化させることが報告されています。しかし、看護師が実施する患者支援では、口腔ケアの実施率は著しく低く支援内容の検討が必要であると考えています。

そこで、本研究では、関節リウマチ(Rheumatoid arthritis: RA)患者とシェーグレン症候群(Sjögren’s disease: SS)患者を対象に、口腔内環境とブラッシング行動に対する自己効力感の実態を調査しました。その結果、口腔内環境は、歯の健康、歯ぐきの健康、口腔清掃度のうちRA患者、SS患者ともに歯ぐきの健康が高値を示しました。また、ブラッシング行動に対する自己効力感は、RA患者とSS患者に差はなく「アドバイスは聞き入れて行う」の項目が高いことが明らかとなりました。以上から、RA患者、SS患者は歯周病リスクが高く、口腔ケアに対する患者支援は重要であることが考えられました。また、口腔ケアに対する患者支援を行うためには、患者支援の内容として治療薬や年齢、機能障害を考慮した道具の選定やブラッシング方法についての検討を行うこと、外来診療の際に看護師が患者支援を行える体制を整えることが重要であることが示唆されました。リウマチ膠原病患者に関わる看護師は、薬物管理や感染管理といった様々な患者支援を行っています。今後は、口腔管理についての患者支援について、具体的な支援の方法が確立できるように研究を進めていきたいと考えております。

  今回、本学会に参加し先生方と議論する機会を得られたことは、今後の研究における新たな課題や目標を見つける有意義なものとなりました。この経験を活かし、引き続き研究に取り組んでいきたいと考えております。改めまして、この度はご支援を賜りましたことに深く御礼申し上げます。