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東京女子医科大学医学部膠原病リウマチ内科学分野 樋口智昭

 このたび、令和8年度日本リウマチ財団「国際学会におけるリウマチ性疾患調査研究・研究発表助成」にご採択いただき、誠にありがとうございました。この場をお借りして、専攻委員の先生方並びに財団関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
 本助成を賜り、令和8年6月3日から6日にかけて英国・ロンドンで開催されたEULAR2026に参加し、研究発表を行いました。今回、私は2つの演題が採択され、いずれもポスター発表を行いました。
 1つ目はPOS1006「Risk of disease progression events in patients with anti-melanoma differentiation-association gene 5 antibody-positive rapidly progressive interstitial lung disease treated with and without initial triple-combination therapy: A Japanese retrospective multicenter registry study」という演題です。本研究では、極めて予後不良な病態として知られる抗MDA5抗体陽性急速進行性間質性肺疾患に対し、高用量グルココルチコイド、カルシニューリン阻害薬、シクロホスファミド静注からなる初期3剤併用療法が、疾患進行イベント発生に与える影響について、日本の多施設レジストリデータを用いて解析しました。その結果、初期3剤併用療法を受けた患者群と、それ以外の治療を受けた患者群との間で、疾患進行イベントの発生率に明らかな差は認められませんでした。本研究の結果から、今後は、個々の患者さんに適切な治療レジメンを選択するための判断根拠となるバイオマーカーや臨床指標の開発が重要であると考えられました。また、既存治療では十分に救命できない患者群に対する、さらなる有効な治療法の開発が必要であることも示唆されました。質疑応答では、 各国の参加者から、抗MDA5抗体陽性急速進行性間質性肺疾患の疾患概念や3剤併用療法の具体的内容について多くの質問を受け、改めて日本がこの分野をリードしていることを実感しました。
 2つ目はPOS1287「Association between underweight and unfavourable clinical events in Japanese patients with rheumatoid arthritis: analysis of IORRA cohort」という演題です。本研究では、BMI 18.5 mg/kg/m2 未満の低体重の関節リウマチ患者における死亡、入院感染症、骨折、心血管イベントの発生との関連について、東京女子医科大学膠原病リウマチ内科の前向きコホート研究である IORRA コホートのデータを用いて解析しました。低体重はいずれのイベントも正常体重の関節リウマチ患者患者と比較したところ、入院感染症、骨折、心血管イベントを含む複合アウトカムとは有意な関連を認めました。一方で、各イベントを個別に解析した場合には、いずれのイベントについても有意な関連を認めませんでした。本研究は、低体重の関節リウマチ患者では様々な臨床イベントのリスクが高い可能性があるのではないかという臨床疑問から着想したものですが、低体重の関節リウマチ患者においても正常体重の患者と同様に、寛解を目指した標準的な治療戦略を検討することが妥当であることが示唆されました。
 今回の学会発表を通じて、リウマチ学に対する知見を深められただけでなく、 研究成果を多様な視点から討議することの重要性を改めて実感しました。また、抗MDA5抗体陽性急速進行性間質性肺疾患は、私自身がリウマチ学の専門研修を開始して最初に診断した疾患でしたが、懸命な治療にもかかわらず救命できなかった症例を経験したことから、最も思い入れのある疾患の1つです。今回の発表が、この疾患に苦しむ患者さんの診療や研究の進展に、少しでも貢献するものであれば、この上ない喜びです。
 改めまして、このような機会をいただきましたことに、心より感謝申し上げます。

 

京都大学医学部附属病院 免疫・膠原病内科
神戸市立医療センター中央市民病院 膠原病・リウマチ内科
辻 英輝

発表題目:Clinical Manifestations and Long-Term Prognosis of Juvenile- and Adult-Onset Takayasu Arteritis(若年発症型および成人発症型高安動脈炎の臨床症状と長期予後)

 日本リウマチ財団国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表助成を頂き、誠にありがとうございました。ご評価いただきました選考委員の方々をはじめ財団関係者の皆様、ご推薦いただきました森信暁雄先生にはこの場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
 この助成金は、研究集会発表に要する参加登録料、旅費、宿泊費として使用いたしました。助成金のおかげで、令和8年6月3日から6月6日にイギリス・ロンドンで開催された2026年欧州リウマチ学会学術集会(EULAR2026)に出席し、研究内容をポスター発表することができました。
 私はこれまで成人発症と若年発症例の自己免疫疾患 (発発性炎症性疾疾患、身性性エリテマトーデス、身性性硬化症)では病態や予後が異なることを示してきました。また、自己免疫疾患におけるヒト白血球抗原(HLA)遺伝子の同定と機能解析を行ってきました。高安動脈炎は身性の主要な血管に炎症を生じる難治性疾患です。若年発症は成人より予後不良ですが、これまでその病因や予後因子は不明でした。今回、若年発症高安動脈炎に発徴的なHLA遺伝子型を同定しました。さらに、若年発症型の病態・予後が成人発症型と異なることが明らかとなりましたので、自己免疫疾患の権威であるEULARで発表しました。学術集会に参加することで世界的な権威の先生方と議論を組み交わすことができました。この学会に参加できたことは今後の研究の進展におおきな貢献になりました。この集会に出席することで、海外の学者と交流するよい機会となり、世界中の新しい知見を私が知ることで次の研究につながる可能性があると考えます。
 最後になりますが、欧州リウマチ学会に参加するに当たり、貴財団からの支援によって、無事集会に参加、発表することができました。貴財団に厚く御礼申し上げます。

 

金沢大学附属病院 腎臓・リウマチ膠原病内科 川原寛之

 このたび、令和8年度「国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する助成」に採択いただき、英国ロンドンで開催されたヨーロッパリウマチ学会(EULAR 2026)に参加しました。ご支援を賜りました日本リウマチ財団ならびに関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。

 私は「IgG4-related lymphadenopathy as an activity-related feature rather than a poor prognostic factor: a Japanese multicentre retrospective cohort study」という演題でポスター発表を行いました。

 本研究では、関連4施設のIgG4関連疾患患者263例を対象に、診断時のリンパ節病変の特徴と臨床的意義を検討しました。リンパ節病変は47例に認められ、頸部や縦隔を中心に、比較的小さなリンパ節腫脹が複数領域に対称性に分布することが特徴でした。リンパ節病変を有する患者では、可溶性 IL-2 受容体や IgG4-RD Responder Index が高い一方、死亡、再燃、新規臓器病変との関連は認めませんでした。以上から、IgG4 関連疾患におけるリンパ節病変は予後不良因子というよりも、診断時の疾患活動性を反映する所見である可能性が示されました。

 幸いにも、国内外の多くの参加者にポスターの前で足を止めていただき、対面で充実した議論を行うことができました。本研究は限られた地域を対象とした後ろ向き研究ではあ りますが、日常診療から生じた臨床的疑問を多くの方々と共有できたことを、大変ありがたく感じました。IgG4 関連疾患およびそのリンパ節病変について国際的にも活発な研究と議論が続いていることを改めて実感するとともに、本研究の課題や今後検討すべき点について多くの示唆を得ました。これらを踏まえ、今後は病変リンパ節の病理学的特徴や免疫細胞の構成についても解析を進め、本研究の知見をさらに発展させたいと考えています。

 最後になりますが、貴重な発表と研鑽の機会を賜りました日本リウマチ財団の皆様、研究にご協力いただきました患者の皆様、共同研究者ならびに関係各位に、改めて深く感謝 申し上げます。

 

金沢大学附属病院 腎臓・リウマチ膠原病内科 吉田美咲

演題名: Impact of Glucocorticoid Exposure on Mortality, Hospitalization, and Infection Risk in Patients With Rheumatoid Arthritis: A Time-Dependent Analysis Using the Weighted Cumulative Index

 このたび、令和8年度日本リウマチ財団「国際学会におけるリウマチ性疾患調査・研究発表に対する助成」を賜り、ロンドンにて開催されたEULAR2026に参加する機会をいただきました。誠にありがとうございます。今回は大型血管炎やワクチン接種に関するrecommendationなど多数のセッションが4日間にわたり行われました。以下に、参加報告を申し上げます。
 本学会において、関節リウマチ(RA)コホートにおけるグルココルチコイド(GC)累積曝露量と重篤な感染症・入院・死亡リスクとの関連を検討した研究をポスター発表いたしました(POS1307)。GCの累積投与量指標として Weighted Cumulative Index(WCI)を用いCox比例ハザード回帰分析を行いました。制限付き3次スプライン曲線による解析では、全死亡と入院リスクはWCI依存でリスクは増加し続け、感染リスクもWCI約500付近でプラトーに達するもHR3程度のリスクを認めました。また、リスクの持続については、死亡リスクは GC を WCI500 まで継続した後に中止した場合にリスク消失まで約228日間かかることが認められました。また、疾患活動性はGCの使用有無にかかわらず減量後も改善を認めませんでした。これらの知見は、RA診療においてGCを漫然と使用せず、早期に減量・中止することを念頭として処方開始することの重要性を支持すると考えます。
 発表だけでなく聴講したセッションでも多くを学ばせていただきました。今学会への参加を通じて、大型血管炎・筋炎・骨代謝・間質性肺疾患・予防医学と、リウマチ診療の幅広い領域にわたる最新セッションに参加することができました。CAR-T 療法や二重特異性抗体など自己免疫疾患の根治を目指す次世代治療の急速な進歩が印象的であった一方、GLP-1のような既存薬でRAやOAの改善を目指すという観点は、今後のRA診療において、新たな研究の方向性を考えるきっかけをいただきました。口頭・ポスター発表を通じて自身の研究テーマに直結するセッションが多く、今後取り組みたい研究課題もみつけられ、大きな収穫でした。
 本助成を通じて国際学会という舞台で研究を発表し、世界水準の知見に触れることができたことは、今後の診療・研究・教育活動の大きな糧となりました。日本リウマチ財団のご支援に心より感謝申し上げます。今後も国際的な視点をもってリウマチ診療の質向上と研究成果の蓄積に励んでまいります。