平成24年8月5日開催

 

リウマチ専門職制度の概要とリウマチ性疾患とは

桑名市総合医療センター・
桑名東医療センター内科・リウマチ科顧問
松本 美富士 先生

  日本リウマチ財団はリウマチ性疾患の征圧を目指す事業の一環として、発足時より地域のリウマチ性疾患のプライマリケアを担う臨床医の育成のためにリウマチ登録医制度を運営してきた。昨今の医療崩壊が議論されるなか、多職種の協働によるチーム医療がシステム化されつつある。特にリウマチ医療においては患者・家族の参加を得た多職種との協働によるチーム医療がリウマチ患者のADL, QOLおよび生命予後の改善に必須であることから、患者さんと最も身近な存在であり、ケアの中心的役割を担う看護職を対象にリウマチケアに特化した医療職の育成が喫緊の課題となることから、2010年度から財団登録リウマチケア看護師制度を発足し、これまでに600名弱のリウマチケア看護師が登録され、各地域で財団リウマチ登録医等と連携して優れたリウマチ医療、ケアを提供していることが報告されている。制度発足3年目を迎え、改めてリウマチケア看護師制度についてその背景、現状、今後の課題などについて解説するとともに、医療のなかでケアが重要な役割を果たすリウマチ性疾患の範疇とその特徴について言及する。

 


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看護職の生涯教育について

日本看護協会看護研修学校
教育研究部継続教育係 
友竹 千恵 先生

看護職の生涯教育とは

 看護職の生涯教育は「病院・診療所・保健所を問わず、すべての看護職員が専門職業人として成長するために生涯にわたって行われる一貫した教育1)」とされている。看護職の生涯教育は、看護基礎教育と看護継続教育の2つに大別される。うち、継続教育とは、看護基礎教育の上に積み上げられる学習経験である。体系的に計画された学習や個々人が自律的に積み重ねる学習、研究活動を通じた学習などさまざまな形態をとる2)。例えば、日本看護協会等で行われる施設外教育や、自施設で行われる施設内教育などがある。

 

看護職の継続教育に関する法・ガイドラインなど

 看護職の継続教育に関して、2009年に、保健師助産師看護師法ならびに看護師等の人材確保の促進に関する法律が改正された。看護職の臨床研修の努力義務化は、新人看護職員のみならず、看護職全てが対象である。看護職個人には、専門職としての資質向上に向け、能力の維持・開発に努めることが求められ、組織には、継続教育の機会の確保や教育の提供体制・内容の充実が望まれている。 
  日本看護協会は、基本理念として、教育と研鑽に根ざした専門性に基づき看護の質の向上を図ることを掲げ、これにより、人々の人間としての尊厳を維持し、健康で幸福でありたいという普遍的なニーズに応え、人々の健康な生活の実現に貢献することを使命としている。看護者の倫理綱領3)の条文8には「看護者は、常に個人の責任として継続学習による能力の維持・開発に努める」と掲げ、「継続教育の基準4)」も提示している。

 

看護職に求められること

 皆様は、どのような理由で研修に参加されるのだろうか。
  理由は様々であると考えるが「学習の必要性に気づき」「学習の機会を得て」「学習したことを自身の看護、部署の看護に生かす」ことが大切である。
  仮に、ある看護師がこのような場面に直面したとしよう。「安静度を守ってほしいと伝えているのに、患者のAさんはトイレに歩いてしまった。“動かないと動けなくなるから”と言って。そして、歩行後に痛みが出現してしまった。」
  ここで、この看護師が、いつもの頓服の鎮痛剤を渡して終わるのか、それとも 
「どうしてこのAさんはいつもこのように行動するのだろう」「Aさんの痛みの原因は何か」と考える機会とするかで、その後の看護は異なってくる。まず、自ら、日頃の看護に問題意識を持ち、学習の機会とすることが、患者の健康上のニーズに対応するための、専門的な能力を維持・開発する第一歩である。

 

<文献>1)看護行政研究会(編)(2011):看護六法平成23年版,p1190-1198,
         新日本法規出版.
      2) 日本看護協会(2000):継続教育の基準,看護,52(11),p72-77.
      3) 日本看護協会(2003):看護者の倫理綱領,日本看護協会HP
         http://www.nurse.or.jp/nursing/practice/rinri/rinri.html
      4) 前掲2)


 

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患者会の紹介:全国膠原病友の会の活動

全国膠原病友の会会長 
森 幸子 先生

 全国膠原病友の会は、1971年(昭和46年)11月28日に膠原病患者と専門医、有識者の諸先生、その他多くの方の励ましと支援により結成された。会員は、全国で約5,000名。東京都に本部事務所を置き、現在34の都道府県に支部があり各地での活動も行っている。 

■会員
  膠原病、類縁疾患の患者・家族 … 全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎、混合性結合組織病、結節性多発動脈炎、関節リウマチ、ウェゲナー肉芽腫症、悪性関節リウマチ、シェーグレン症候群、顕微鏡的多発血管炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、大動脈炎症候群(高安動脈炎)、側頭動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、成人病スティル病、ベーチェット病、再発性多発軟骨炎、小児膠原病など。

■目的
1.膠原病をよく知り、理解を深め、正しい療養をする。
2.明るく希望の持てる療養生活が送れるように会員相互の親睦と交流を深める。
3.膠原病の原因究明と治療法の確立ならびに社会支援システムの樹立を要請する。

 

■主な活動
・重点活動 … 災害対策、未承認薬問題、難病制度改革、生活支援改革に取り組んでいる。
・相談・支援 … 本部、支部にて面談、電話等によりピアサポートを行う。専門医や難病相談・支援センター、保健所などと連携した対応を行っている。
・医療講演、交流会の開催 … 本部、支部により全国各地で開催。

 

■情報発信・発行物
・本部機関紙「膠原」年4回発行、その他各支部より発行。
・ホームページの運用、メーリングリストにて各支部に情報発信。
・「膠原病ハンドブック」(第3版) … 膠原病の疾患別の基礎知識、疾病に関連して知っておきたい知識を掲載。
・「膠原病手帳」(緊急医療支援手帳) … 災害などの緊急時に役立ち、日常の体調管理を行う手帳を毎年3月に発行。

 

■膠原病は全身に及ぶ複雑な成り立ちの疾患であり、病名が同じでも、症状や治療も個々により様々であることが多い。患者自身も自分の状態を把握し、医療者や家族、周囲に伝えることが難しい。外見上、症状が理解されず、誤解や偏見を受けていることがある。家族や仕事など様々な状況を抱え、環境によっても、困難なことや不安なこと、必要な支援が異なるので、一人一人に丁寧に向き合った対応をお願いしたい。

 

問い合わせ先 … 「全国膠原病友の会」
〒102-0071 東京都千代田区富士見2-4-9千代田富士見スカイマンション203
TEL 03-3288-0721・FAX 03-3288-0722 ホームページhttp://www.kougen.org/

 


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リウマチケア看護師の活動の紹介

新潟県立リウマチセンター 
看護師  吉川 朋   先生

 近年、関節リウマチ(RA)は生物学的製剤の登場で寛解できる疾患となったことから、寛解達成という目標を設定し治療を行うTreat to target(T2T)の概念が導入されつつある。T2Tの概念は関節破壊や身体機能障害を予防できると期待されている。T2Tの概念においてもっとも重要とされていることは、患者自身が疾患や治療について理解しチーム医療に参加することである。また看護師をはじめとするコメディカルがT2T概念を理解しチームで医療を提供することも必要である。リウマチケア看護師となって1年半の活動を患者教育と看護師教育に焦点をあて紹介する。また、市民への啓発活動やリウマチ災害支援活動、臨床研究コーディネーター(CRC)としての活動も紹介する。

1.患者教育
 RAは早期発見・早期治療が重要であり診断直後から抗リウマチ薬が開始されるため同時に患者教育も開始されなくてはならない。検査や診断と処方は医療機関が行い、以降の内服や副作用のような症状が出た場合の受診などは患者の自己管理となる。患者がチーム医療の一員として自己管理ができ治療に参加できることが求められる。RAへの理解や自己管理についてだけではなく疾患活動性の全般評価の方法や検査の理解など多くの項目を洩らさず教育と記録ができるようなチェックシートを使用し、入院・外来を問わず計画的かつ継続的な関わりとなるように情報共有している。

 生物学的製剤が必要となった患者に対しても十分な教育が必要である。免疫抑制状態となるため生活上の注意点や感染など異常時の電話相談の重要性を理解できるように教育する。また自己注射製剤の場合には注射手技や製剤管理などの指導も欠かせない。患者が自宅で不安なく注射できるよう回数を問わず自信がつくまで関わっている。

2.看護師教育
 平成21年度より、チーム医療に貢献できる人材の育成を目的に院内認定看護師教育プログラムを作成し研修を行ってきた。また、院内のリハビリスタッフや薬剤師など他職種にも研修参加を促しチーム医療における構成メンバーの知識・技術の向上につなげている。研修の一部はリウマチケア看護師制度に伴いリウマチケアに関する教育研修会として財団に認定され単位を取得できる。そのため、連携医療機関に研修案内し院内のみならず院外のリウマチケア看護師を目指す看護師への支援も行っている。

 


 

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リウマチケア看護師に期待されている役割

甲南加古川病院看護支援センター
慢性疾患看護専門看護師 元木 絵美 先生

 発症早期からの積極的な治療や生物学的製剤の導入によってリウマチ治療は大きく変化した。治療の変化に伴い、看護に求められる役割も変化してきている。リウマチケアに必要な要素とは何か、リウマチケアの専門性とは何かについては、系統的に明らかにされておらず、皆さんの日々のケアの中に埋もれている「実践知」を、これから抽出しようという段階にある。リウマチケア看護師には、治療の現場では一体何がおこっているのかを見極め、どういった現象に対してどのようなケアが求められているのかといったことを話しあい、ケアの「引き出し」をたくさん作っていく(ケア方法を蓄積していく)ことが求められている。その方法の一つとして当院では、2011年から事例検討会を行っている。看護師は、事例検討および事例研究を軽視する傾向にあるが、特徴的だと思われた事例や、特殊だと思われた事例について、どんどん事例検討/事例研究を行い、共通のケア方法がないか検討していく必要がある。これまでに検討した事例を提示しながら、当院で行っている事例検討会の概要を紹介する。

 厚生労働省が行っている平成20年度患者調査によると、リウマチ患者の外来治療の割合は84%であった。 過去のデータと比較すると、入院治療に比べ外来治療の割合が増加してきており、多くのリウマチ患者は在宅で療養を行っていることが判る。以前のリウマチ治療とは異なり、現在は患者が治療を自己決定しなければならない場面も増えてきている。看護師が患者の自己決定を支援するためには、その患者がどのように生きたいと考えているのか、病気とどのように付き合っていこうと考えているのか等を理解しておかなければ、患者に適切な選択肢すら提示することはできない。このように、外来に求められる機能は増大しているが、外来看護の実際はどうだろうか。看護師が足りない、一人の患者にかかわれる時間も限られている、場所がない、検査や次回予約日の手続きなど事務的作業も多く、患者の病気に対する気持ちなど聴く余裕もないというのが実状ではないだろうか。

 当院では外来に所属する財団登録リウマチケア看護師と慢性疾患看護専門看護師が協働し、2012年4月に「リウマチ療養相談外来」を開設した。外来でリウマチ科(主に関節リウマチ)を治療している患者やその家族を支援することが目的である。リウマチ療養相談外来の活動を一部紹介したいと考えている。


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リウマチのリハビリテーション指導

大阪医科大学総合医学講座
リハビリテーション医学教室教授
佐浦 隆一 先生

 関節リウマチ(リウマチ)は30~50 歳代の女性に多く発症し、本邦での患者数は約60万~100万人と推定されている。

 長い間続く関節炎により手足の痛みや変形などの障害が生じ、着替えや入浴、歩行などの日常生活での動作(ADL)が制限されていくことも少なくない。

 最近の研究から、リウマチによる障害は発症後2~3年の間に急速に進むことが明らかとなり、できるだけ早期にリウマチと診断してアンカードラッグ(要の薬)であるメトトレキサートを開始することが大切であると考えられるようになった。

 また、発症早期から「リウマチ」という病気を理解して関節に負担をかけないように生活する患者教育・関節保護動作指導を行うと同時に、筋力低下、関節拘縮や変形などの発症を予防し、その進行を遅らせるためにリハビリテーションを開始することも必要である。

 生物学的製剤の登場とともに2011年には「目標達成に向けた治療 (Treat to Target:T2T)」が提唱されたが、その中でもリウマチ治療の基本原則は「身体機能の正常化、社会活動への参加を通じて、患者の長期的QOLを最大限まで改善すること」であり、そのために「治療方針の決定には、総合的疾患活動性の評価に加えて関節破壊などの構造的変化及び身体機能障害もあわせて考慮すべき」ことが推奨されると記載されている。

 リウマチのリハビリテーションの目的は、全罹病期間を通じて「痛みの軽減」と 「関節の変形予防」、「日常生活機能の維持と改善」である。発症早期からの関節保護動作の指導やホットパックなどの物理療法、装具療法、関節可動域練習や筋力強化練習などの運動療法、日常生活動作練習などの作業療法が実施される。また、介護が必要となった場合には、日常生活機能や生活の質(QOL)を維持するために、介護保険や身体障害者手帳などの福祉制度を利用して環境整備や人的資源の導入と整備を行う。

 リウマチのリハビリテーション指導では、リウマチ患者を「疾患単位」ではなく、 「生活しにくさを持つ人間」として捉え、患者ひとりひとりの疾患活動度、関節破壊、身体機能障害の程度を考慮しながら、個々の患者の状態に適した有効なリハビリテーションや介護を提供してくことが大切と考えている。

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「関節リウマチの治療戦略」

近藤リウマチ・整形外科クリニック院長 
近藤 正一先生

 最新の関節リウマチ(以下RA)の治療戦略は各種勧告に基づくRAの早期診断と早期治療である。
  この治療戦略の目標はRAの寛解と骨破壊の防止にあるが、進行例でも積極的な治療で寛解または低疾患活動性を目標として、これを維持することである。

[早期診断]
 RAは発症早期に治療することで、その後の骨破壊を抑制することが証明されている。2012年の米国リウマチ学会のRA治療勧告では発症半年以内を早期RAとし、それ以後はすでに進行したRAとしている。従って、いかに早期にRAを診断するかが重要となり、2010年に欧州及び米国リウマチ学会から早期RAのための分類基準が発表され、我国でもこれを採用している。この新基準では早期診断の感度が75%に上昇したが、特異度は71%とやや低下しているので、鑑別診断が大切となる。

[RA治療の進歩]
 生物学的製剤の登場によりRA治療が大きく進歩し、多くの患者で寛解が可能となった。従って、この生物学的製剤を組み込んだ新しいRA治療勧告が2010年欧州リウマチ学会から、2012年米国リウマチ学会から発表された。いずれも関節破壊への進行リスクの高いRA患者には初回よりメソトレキサート(MTX)を投与し、1~3カ月間で評価を行い、必要に応じてDMARDsの併用や生物学的製剤の追加投与を勧告している。この時の指標となるRA寛解基準は従来DAS28であったが、2012年にはより厳しい寛解基準であるSDAI、Boolean基準が勧められている。これらの総合的疾患活動性評価は従来の炎症関節数や炎症マーカー(CRP、ESR)のみならず、患者評価がより重要視されている。日常診療ではこれらの疾患活動性評価を1~3カ月毎に行い、治療を見直して寛解または低疾患活動性へタイトコントロールしていくTreat to Target(T2T)が導入されつつある。

[まとめ]
 我国でも2010年発表のRA診断基準の検証が終わり、早期RA診断がより可能となった。これに加え、6剤の生物学的製剤が使用可能で、MTXの投与量も16mg/wまで増量された。これら強力な抗RA剤を早期から積極的に使用し、かつT2T考えで、寛解を目標とした日常診療を行っていくことが、現在のRA治療戦略となっている。


 

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関節リウマチの生物学的製剤による治療

慶應義塾大学医学部
リウマチ内科講師
亀田 秀人 先生

 関節リウマチ(RA)の治療の成否を決定する主な要因として、患者要因としては、合併症が無いこと、そして疾患や治療に対する十分な理解に基づく積極的な治療参加が挙げられ、医療者要因としては、基本方針であるTreat to Target(T2T)の理解と実践、そして治療薬の特性を十分に理解した効果不十分や副作用への対応である。従って、生物学的製剤治療の側面からリウマチケア看護師に期待される役割として、問診等による合併症の十分なチェック、T2T実践のための臨床評価への積極的参加、そして治療薬への深い理解に基づく患者説明・教育や対応の3点に集約できる。

 合併症の中で特に重要なのは、間質性肺疾患、呼吸器感染症、ウイルス性肝炎、そして悪性腫瘍である。RAの活動性が高いことよりも、寛解導入に必要な治療薬の選択が制限されることが大きい。2008年に行った自身の外来調査で、約4割のRA患者が非寛解であったが、その最大の理由は合併症による不十分治療であった。生物学的製剤のリスクも多くは患者要因(合併症)に規定されることが判明しており、安全性の面からも複数の医療者によるダブルチェックやチェックシートの活用などが望まれる。

 T2T実践のための臨床評価で重要なのは詳細な身体機能評価であり、治療の最大の目的となる身体機能が初診時や治療経過のポイントにおいて十分に評価されることは不可欠である。HAQ-DI(決してmHAQではない)を基本に、患者毎のプラスアルファが必要である。診察室でのリアルタイムの数値化が可能なら、さらに有用かもしれないが、総合的な数値のみに基づく単純な臨床判断の危うさも忘れてはならない。

 生物学的製剤の作用機序は一見明確なようで、実際には不明な点が多い。しかし、低分子化合物とは明らかに異なる特性を有しており、その特性を最大限に活かした治療が求められる。必要な時期を逃さずに充分量を投与することがポイントであると思われ、患者説明において十分留意されたい。


 

 


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