平成30年度日欧リウマチ外科交換派遣医

 

   

 

 

TOKYO

埼玉医科大学整形外科 門野夕峰
社団法人博恵会/慶應義塾大学  桃原
茂樹


日本リウマチ財団とEuropean Rheumatism and Arthritis Surgical Society (ERASS)との間で日欧リウマチ外科交換派遣医制度(European and Japanese Exchange Fellowship in Rheumasurgery)が隔年に交換留学が実施されていますが、2018年度はフランスのThomas Jager先生とロシアのMarina Lipina先生が来日されました。 2週間の滞在中、最初の4日間を東京で過ごしていただきました。タイトなスケジュールのためお二人とも大変だったと思いますが、研修を受け入れて頂いた施設の先生方に厚く御礼を申し上げます。
以下、各施設からのレポートです。
 

11月5日(月) 東京大学医学部附属病院整形外科

東京大学医学部附属病院から研修がスタートしました。

午前中に関節リウマチに対する非拘束型の人工肘関節を見学いただきました。ヨーロッパでは非拘束型の占める割合は高くなく、非拘束型の人工肘関節に興味を持たれておりました。昼には東大構内の施設見学をして、夕方にはThomas Jager先生よりフランスにおける手関節治療の最新のトピックスについて講演して頂きました。日本ではまだ普及していない人工手関節や手根骨インプラントについての話は大変興味深く、関節グループ及び手の外科グループの医師から複数の質問があり、大変盛り上がりました。夜は田中栄教授も交え会食を行い楽しんで頂きました。

 

 

11月6日(火) 高久理事長表敬訪問

 
 

11月7日(水) 東京都立墨東病院リウマチ膠原病科

墨東病院の手術見学を行いました。関節リウマチの足趾関節形成術を見学していただきました。疾患活動性のコントロールがままならない時代は切除関節形成術を行うことが多かったですが、現在では関節温存手術を行う施設も多いかと思います。初めてみる足趾手術を興味深く見学されていました。夜は隅田川とお台場の夜景を眺めながら、下町情緒を少し堪能して頂きました。

 

OKAYAMA

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生体機能再生・再建学講座 整形外科

西田 圭一郎

 

11月8日(木) 日本関節病学会

東京より新幹線にて岡山に到着。その夜は日本関節病学会会長招宴にご招待し, 出席者全員の前でスライドを用いて西田がお二人を紹介しました。

 

 

11月9日(金) 岡山大学病院  日本関節病学会

 

AM: 岡山大学病院見学(学会期間中につき, 当科の松橋医師, 沖田医師に依頼。)
スライドを用いた術後患者の紹介と手術方法についてのDiscussion, 病棟回診, リハビリテーション室, 手術室の見学をしていただきました。

PM: 昼食後, 日本関節病学会会場の岡山コンベンションセンターに移動。
15:00-16:00 ミシガン大学のKevin Chung先生の講演 “The care of the rheumatoid hand and wrist, controversies and outcome”を聴講。
18:10- ANAクラウンプラザホテルでの全員懇親会に出席。

会終了後, 岡山駅から大阪に向けて出発されました。

 

OSAKA-NARA

大阪南医療センター    橋本  淳

 秋田 鐘弼

11月9日(金) ~ 11月11日(日)奈良・第2回リウマチ手外科国際シンポジウム

 

11月9日(金)
夜、岡山での関節病学会に参加した二人の留学生は新大阪に到着しました。

今回大阪での施設滞在はなく、岡山と福岡の施設見学の狭間でできる土・日の二日間でいかに有意義に学んでいただけるかが与えられたミッションでありました。

滞在時間が短いということで、大阪南医療センターの野口貴明、秋田鐘弼、橋本淳で分刻みの移動スケジュールを努めました。

学ぶ内容は「文化と医学」です。

「文化」のところは、奈良医大整形外科教授の田中康仁先生のご厚意で、11月10日(土)朝から田中教授夫人と奈良医大整形外科教室員の原良太先生による東大寺、依水園などの奈良玄人観光コース案内で、日本文化に深く触れていただくことができました。4時間ほどのshort tripでありましたが、心に深く日本文化が刻まれたようです。

その後、原良太先生とともに大阪難波に戻りました。そして、その日の夕方から南川義隆先生が会長を務められた第2回リウマチ手外科国際シンポジウムの一環である南川整形外科でのCase discussionとシンポジウム会場近くのレストランでのWelcome receptionに出席していただき、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各国の手外科医、整形外科医と交流していただきました。

11月11日(日)
朝から夕方まで第2回リウマチ手外科国際シンポジウムと、その夜に南川先生主催の晩餐会に参加していただきました。特にCase discussionは大変勉強になったとの感想をいただきながら、12日(月)朝秋田鐘弼が新大阪駅までお見送りをして、九州医療センター宮原寿明先生の待つ福岡へ立ちました。わずか二日間の大阪でしたが、「文化と医学」を楽しんでいただけたのではないかと思います。

 

 

 

FUKUOKA

九州医療センター 宮原 寿明

 九州大学整形外科 福士 純一


 

11月12日(月) 九州医療センター

九州来訪1日目は九州医療センターの宮原が交換派遣医のお世話を担当いたしました。正午過ぎに、新幹線で大阪から移動してこられたDr JagerとDr Lipinaを博多駅のプラットフォームで出迎え、すぐに博多ラーメンの人気店で昼食をとっていただきました。皆さんから博多での一番のおすすめと聞いていたとのことで、とても喜んでおられました。その後、ヒルトン福岡シーホークホテルにチェックインしてもらい、同ホテルの真向かいにある九州医療センターを案内いたしました。整形外科・リウマチ科外来を訪問後、リウマチ・膠原病センター病棟に案内しましたが、この病棟を整形外科リウマチ医と内科リウマチ医が共同で運営しており、仲良く共同診療していることを説明しましたら、患者さんにとって理想的な環境だと感嘆しておられました。
その後は、日本訪問も終盤でお疲れだろうと思い、リラックスのために大宰府天満宮と紅葉のきれいな日本庭園がある光明禅寺にお連れしました。光明禅寺は京都の庭園の代わりになって、良かったようです。夜は九州医療センター整形外科スタッフと九大の福士先生を交えて、交流・懇親会を開催しました。皆、両先生と楽しく会話ができて大変満足しておりました。

 

11月13日(火) 九州大学病院

 

九州来訪2日目は九州大学の福士が担当いたしました。宿泊のヒルトン福岡シーホークホテルにてピックアップし、九州大学病院を案内しました。

午前中はTFCC損傷に対する尺骨短縮骨切り術を見学し、術式の選択について執刀医とでdiscussionして貰いました。搬入を待つ間に医局でランチを食べながら、中島教授も含めてヨーロッパの医療事情について伺いました。両名とも私よりやや若いのですが、「最近の若者は我々の時ほど熱心じゃない」という認識を持っており、どこも同じだね、という話題で盛り上がりました。

午後は私の執刀するリウマチ足趾に対する形成術で、Dr Jagerに手洗いをして貰い、骨切りに用いるプレートの形状や厚さについて話しながら、手術室を後にしました。

夕方からは九州大学医学部百年講堂のホールで両名にプレゼンテーションをして頂きました。Dr Lipinaからはロシアのリウマチ診療の現状について、Dr Jagerからは手の外科の基礎的な講義をしていただき、立食の懇親会にて歓談し、解散となりました。

 

 

NIIGATA

新潟県立リウマチセンター 名誉院長 村澤  章

 約2週間の国内ツアー最終目的地は新潟となりました。大都会と違って人もまばら、移動もビルの谷間でなく落葉が始まった樹々の間、少し肌寒い季節になって派遣医も戸惑うかと思いましたが、意外と平気。
Dr. Lipinaはモスクワ出身、Dr. Jager はルクスセンブルグから、以前から日本文化に憧れていたようで、寿司料理、箸使用、畳、日本酒など全てに興味深々でした。

 

11月14日 (水)新潟県立リウマチセンター


9:50、福岡から空路にて新潟まで移動。村澤と阿部が車で迎え、一旦市内の日航ホテルでチェックインし、その足で40km北に位置する新潟県立リウマチセンターに向かいました。
当日は新潟では珍しく青空も見られ、到着後まず隣接する県立新発田病院の屋上13階から新発田市内を一望いただきました。北に山形、飯豊山脈、日本海、西に新潟市、弥彦山、佐渡島と続き、東に月岡温泉郷が位置します。日本での公的病院唯一のリウマチセンター設立の歴史を伝え、そのあとセンター内を案内、リウマチ病棟、リハビリテーション病棟、リウマチ外来、DXA、内視鏡検査室などの運用状況やリウマチ医療への関与を説明しました。やはり国によってリウマチ医療システムの大きな違いには驚いていましたが、日本国内でも地域によってリウマチ外科医の立場の違い、薬物使用の関与などに温度差があることに興味を持たれたようです。私たちのリウマチ医療の目指す方向性はリウマチ外科医も内科医も、多職種と協働し他施設との連携によって地域格差のない医療を患者に提供することと伝えると、自国でそのようなシステムを導入できるかは不明であるがその真意は理解できるとのことでした。
午後は手術見学となり、RA患者の足関節固定術(術者 阿部)ーフィン付き髄内釘使用ーを経験いただきました。
夕方日航ホテルに戻り、ホテル内の中華料理レストランにて歓迎会を催しました。内科医伊藤先生にも同席いただくと、日本でのリウマチ内科医、整形外科医の役割分担、対等な位置づけに深い感銘を覚えたようです。

 

   

 

11月15日 (木)European-Japanese Exchange Forum of Rheumasurgery in Niigata 2018
 

再び新発田市のリウマチセンターを訪問、医局で記念写真と終了証書授与。
午前中は手術見学、RAの人工肘関節全置換術(術者 石川)―当院で開発した非拘束性セラミックmNSK typeーを披露しました。
午後、ずーと気になっていたという日本酒の製造過程見学の希望をうけ新発田市内観光に出かけました。まず市島酒造の蔵元を訪問し、新酒のシンボル杉玉に感動し、四合瓶大吟醸酒をゲット。次いで紅葉真っ盛りの日本庭園・清水園の散策にてひとときの日本の秋を味わっていただきました。
夕方、新潟市内に戻り新潟大学医学部構内の有壬記念館にてEuropean-Japanese Exchange Forum of Rheumasurgery in Niigata 2018 に出席、プログラム(別表)のような内容で各演者の発表後、活発な質疑応答が続き、最後に派遣医ゲストの講演を拝聴しました。
Dr. Lipina からはArthroscopic synovectomy of knee joint in rheumatoid arthritis の発表があり、BIO導入前時代の症例でも診断や術後の炎症の抑制などに有用であることが強調されました。ちなみに手術時間は2〜3時間、彼女は膝のみの関節鏡に特化しているとのことです。
ついでDr. Jager からはThe techniques we commonly choose and use to treat rheumatoid hand and wrist の講演があり、その中でPyrocarbon球体によるRC joint のinterpositional arthroplasty は、術後脱臼や loosening なく私たちが目指しているTWA の開発とは違った方向性に興味を抱かされました。

会の終了後、行きつけの寿司屋にて日本での最後となる送別会を催し、彼ら個人と、そして欧州と日本との今後の長い友好関係維持への橋渡しとなることを期待し、今年度の日欧リウマチ外科交換派遣医制度を無事終了することができました。

関係各位にあらためて感謝いたします。