リウマチを知ろう!

関節リウマチ

妊娠と育児

Q1.妊娠に重要なことは何でしょうか?
  1. 病勢(病気の活動性)が安定していること。
  2. 流産や先天性形態異常(いわゆる奇形)を起こしやすい薬を服用していないこと。
  3. 流内臓(腎臓、肺、心臓)の強い異常がないこと。

もっとも重要なことは担当の先生と話し合い、妊娠は計画的に行うことが必要です。妊娠の希望を伝えること、すぐに希望がないとしてもお付き合いしていて妊娠の可能性がある場合は、妊娠可能な薬で治療しているか、避妊が必要かについて相談し理解することも重要でしょう。

妊娠を計画したら、病状が安定しており、寛解(病気の活動性がないこと)や低い活動性で安定した状態を継続していることが重要です。病気の活動性が高いと妊娠しにくくなり、不妊症の率が高くなります。また、関節リウマチの病状は、6〜7割の患者さんで妊娠期間中に次第に良くなる傾向がありますが、妊娠した時に病気の活動性が高いと良くならない場合も多く、妊娠中に患者さん自身の関節症状が進んでしまったり、妊娠を継続するのが難しくなったりすることもありえます。炎症の時に上昇する蛋白が胎盤を通って胎児の発達に影響する可能性もあります。

病気を進行させないため早く良くするために、流産や先天異常を起こしやすい薬を一時的に必要とする場合があります。その場合は、有効性の高い方法で避妊することが必要です。担当の先生や産婦人科の先生と避妊についても相談できると良いですね。

病状が安定して妊娠を計画したら、妊娠に安全な薬で病気をコントロールします。全ての薬を中止してしまって病状が悪くなれば、かえって妊娠しにくい状況になってしまいます。

また、太りすぎないこと、痩(や)せすぎないことも妊娠には重要です。やせ・肥満の指標であるBMI(Body Mass Index)は22が適性であるとされますが、18.5未満だと妊娠しにくいというデータもありますので、体を妊娠より前の青少年期より整えることが重要です。BMIは体重kg÷(身長m)2で計算しますので158cm, 51 kgであれば、51 ÷(1.58 X 1.58) BMI 20.4となります。

また、1度でも性交経験がある方は20歳以降は、子宮癌検診も定期的に受けるようにしましょう(Q6).

Q2 風疹のワクチンは接種した方が良いですか?

免疫抑制性の強い薬物や免疫に関係する生物学的製剤など多くの関節リウマチの治療薬ではインフルエンザワクチンなどの不活化ワクチンはむしろ推奨されますが、風疹などの生ワクチンは病原となることがあり、接種が禁じられています。しかし、妊娠中に風疹に罹患するとウィルスによる先天異常が起こる可能性があります。風疹に対する抗体ができていない方で禁忌となる薬で治療している場合は、同居している家族や接触する機会の多い人で抗体陰性者にワクチン接種をしてもらい感染の機会を減らすようにしましょう。

Q3. 関節リウマチの病気自体が胎児に影響することはありませんか?

関節リウマチが安定していたら、影響はしません。但し、関節リウマチの患者さんでは少ないですが、抗SS-A抗体という自己抗体を持っている患者さんがいて、その1〜2%の方で抗体が胎児の心臓に影響することがありますので、妊娠前・妊娠時に確認をします。全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群では抗体陽性の頻度が高くなります。抗SS―A抗体陽性の患者さんは産科で通常より頻回に胎児の経過をみてもらいます。関節リウマチでは更に頻度が少ないですが、抗リン脂質抗体という抗体が流産を起こしやすい場合があります。全身性エリテマトーデスの患者さんはこの抗体陽性の頻度が高いので必要に応じて流産の予防治療をすることがあります。

Q4.リスクのある薬は妊娠の時期によってどのような影響をおこすのでしょうか?

受精前〜妊娠3週頃までは流産を起こす可能性があります。妊娠4〜16週では先天的な形態異常(いわゆる奇形)を起こすリスクがあり、特に妊娠8週ぐらいまでが大きな奇形となり、それ以降は影響が少なくなり小さな奇形となります。そのような薬を催奇形性(さいきけいせい)がある薬と言います。妊娠16週以降は胎児の発達に影響する可能性があります。妊娠合併症(妊娠高血圧性腎症、出生時体重、早産)の調査も行われています。

また、妊娠期間ではありませんが、無月経(卵巣機能不全)に影響する薬としてシクロフォスファミド(商品名エンドキサン)が挙げられます。20歳代より30歳代に起こりやすく、年齢が高いこと、治療期間、治療量が影響します。

Q5.妊娠を計画したら、薬を中止すべきでしょうか?

以前は、薬=胎児に悪影響の考えから、関節リウマチでは、少量のプレドニゾロン(商品名 プレドニン)のみで病状をコントロールし、コントロール不十分であれば、スルファサラジン(商品名 アザルフィジンEN)や屯用の消炎鎮痛薬・アセトアミノフェン(商品名 カロナール)で妊娠〜出産を迎えていました。しかし、Q1で述べましたように、病状が悪くなれば、かえって妊娠に影響する可能性があります。

今日では、薬での治療中に偶然妊娠してしまった方や、妊娠中も薬で治療していなければ病状がコントロールすることができない場合の各々の薬の影響の結果を蓄積したり、妊娠と薬の登録研究をしたりして、一定数以上の大勢の患者さんで服用され流産や先天異常の発生率が、薬を服用していない場合と同じであれば、その薬物で治療しながら妊娠してもおそらくは問題がないという判断で厚生労働科学研究班による、以下のようなガイドライン(治療指針)が作成されました。先天異常や流産の頻度が高い妊娠前に中止するべき薬、妊娠が判明したらすぐやめるべき薬、妊娠中も必要があれば継続可能な薬に分けられます。中止してしまうとかえって妊娠の合併症が多くなり、中止しない方が良い薬物もあります。詳細については、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の出産、妊娠を考えた治療指針http://ra-ibd-sle-pregnancy.orgを参考にして下さい。

また、妊娠に影響する奇形を起こす可能性がある薬を服用していたときに、予定外に妊娠してしまった場合も必ず奇形が起こるわけではありません。例えば、メトトレキサートは流産や奇形の可能性がありますが、服薬中に妊娠してしまったお母さんから生まれてきた赤ちゃんの89 %は健常児で服薬していなかったお母さんとの差は数%です。胎児の超音波検査でかなりの奇形がわかるそうですので、服薬中の妊娠=人工中絶と考えないで、まずは担当の先生に相談してください。

◎全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針「患者様向けQ&A」のQ9妊娠中の薬剤について注意することはありますか?に妊娠中の薬剤についての情報が掲載されています。

Q6.その他に妊娠のために、注意すべきことはありますか? 

子宮頸癌(しきゅうけいがん)は、若い女性でも起こりうる癌で、毎年日本で2900名が命を落としていますが、予防もできる癌です。子宮を守るために予防を心がけましょう。予防には、

  • 子宮頸癌(しきゅうけいがん)(ヒトパピローマウィルスHPV)ワクチン接種
  • 子宮頸癌(しきゅうけいがん)検診の定期受検

が、重要です。子宮頸癌(しきゅうけいがん)はヒトパピローマウィルスというウィルスが、性交で感染することで起こります。多くの人が感染し、自分の免疫の力でウィルスを排除(はいじょ)することができるのですが、この排除(はいじょ)がうまくいかないと、子宮の入り口(頸部)の細胞に異常を起こし(異形成/前癌状態(いけいせい/ぜんがんじょうたい))、しばらくしてから癌(がん)となることがあります。ウィルスが感染する前(つまり、性交経験の前)にワクチンを接種することが有効で、中学・高校生でワクチン接種をするように、厚労省から2022年4月より積極的によびかけられています。また、過去にワクチンを受けていない1997年4月2日~2006年4月1日に生まれた女性も2025年3月末までは公費で接種(キャッチアップ接種)できますので、受けることをお奨めします。それ以上の年齢の方は自費になってしまいますが、まだ、性交経験のない方には、今後パートナーができた時の感染予防に有効ですので検討してみてください。

もう1つの予防方法が、子宮癌検診です。上記のように、ウィルスに感染してから、発癌(はつがん)までは比較的ゆっくり進行しています。したがって、定期的な検査で、癌となる前に見つけ、処置することが可能です。20歳以降の女性は、ぜひ産婦人科で子宮頸癌検診を定期的に受けてください。 

参考:厚生労働省ホームページ