リウマチに関連する病気
反応性関節炎(ライター症候群)
- ①反応性関節炎(ライター症候群)とは?(定義)
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反応性関節炎は、1916年にHans Reiterによって、赤痢罹患後に、関節炎、尿道炎、結膜炎の三徴を示す疾患として報告されたので、ライター症候群としても知られていました。
1999年の第4回国際反応性関節炎ワークショップで反応性関節炎は「HLA-B27関連脊椎関節症を伴う微生物が関与した関節炎」と定義することが提唱され、その他の感染が関与した関節炎は、「感染症関連関節炎:感染性関節炎以外の感染症に伴うすべての関節炎」と提唱され、これが現在の疾患概念となっています。すなわち、反応性関節炎とは、クラミジア菌、サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア菌、キャンピロバクターなどの微生物感染が先行し、それによって惹起された免疫反応による遷延性の末梢関節炎及び脊椎関節炎です。感染の数週間後に発症することが知られていますが、感染症の症状が軽微で関節炎発症時には記憶に残っていないことも少なくありません。
- ②この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
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欧米白人での発症頻度は、人口10万人当たり年間4~6人と推定されていますが、本邦では欧米と比べてはるかに少ないと考えられています。発症機序により、①尿道炎、子宮頸管炎後に発症する型、②細菌性下痢後に発症する型に分けられています。
- ③この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
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発症年齢は20代前後に圧倒的に多いのですが、小児から80歳まであらゆる年齢層に発症します。男女比は、5~6 : 1で男性に多くみられます。
- ④この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
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発症に関与する微生物として、クラミジア菌、サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア菌、キャンピロバクターなどがあり、生体防御のために惹起された免疫反応が関節に交差反応として遷延性の炎症を関節に起こすと考えられています。
- ⑤この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
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遺伝するとは考えられていません。
- ⑥この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
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脊椎関節症、無菌性尿道炎、結膜炎の三主徴を特徴とします。
(1) 末梢および脊椎関節炎
関節炎は微生物感染後、一般的に4~6週後に発症します。末梢関節炎は膝・足関節などの下肢の関節に多く、単関節炎あるいは数箇所までの関節炎で、非対称性にみられます。仙腸関節炎は、約20%に発現し、通常は片側性です。腱や靭帯と骨の付着部の炎症は約70%に発現し、足底腱膜起始部、アキレス腱付着部に好発し、痛みを伴います。
(2)非淋菌性尿道炎、子宮頸管炎
軽度の排尿困難・排尿時痛と粘性膿性分泌物を伴います。 急性胃腸炎が引き金になることもあります
(3)結膜炎
結膜の発赤と充血を示し、光が眩しく痛く感じるなどの症状が起こりえます。
- ⑦診断はどのようにしますか?また、どんな検査が必要ですか?(診断・検査)
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微生物感染と考えられるエピソードから4~6週後に発症する上記のような特徴を有する末梢および脊椎関節炎で、他の関節に炎症を起こす疾患の除外とともに診断となります。
特異的な検査所見はなく、血清リウマトイド因子、抗核抗体は一般的には陰性です。活動性を反映して炎症反応(赤沈、CRP)は亢進します。尿路感染に起因する場合には、尿道分泌物や尿にて細菌培養、PCRによるDNAの同定、血清抗体価測定を行います。また細菌性腸炎に起因する場合には、便の培養を行いますが、感染から時間が立ってから関節炎が発症するので、原因となる微生物の同定には至らないことがよくあります。関節液の培養では細菌の増殖は認められません。仙腸関節炎の症状があれば、MRIなどの画像検査が行われることもあります。
- ⑧この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
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発症に関与する微生物として、クラミジア菌、サルモネラ菌、赤痢菌、エルシニア菌、キャンピロバクターなどがありますが、生体防御のために惹起された免疫反応が関節に交差反応として遷延性の炎症を関節に起こすと考えられているので、抗菌薬ではなく炎症を抑えるための治療が優先されます。しかし、泌尿器系などで感染が慢性化している場合にはそちらの治療もあわせて行います。抗炎症量の非ステロイド性抗炎症薬〈NSAIDs〉が一般的に勧められ、関節内注射なども慎重に適応を判断した上で考慮されます。ただし、症状が遷延化する例には、サラゾスルファピリジンやメトトレキサートなどの抗リウマチ薬が使用され効果が報告されており、欧米ではよく行われている治療です。
- ⑨この病気の新しい治療法について教えてください。(新規治療薬)
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上記の治療で改善しない場合は、長期の抗菌薬の併用、抗リウマチ薬(サラゾスルファピリジンなど)、生物学的製剤などが有効であったという報告も見られます。
- ⑩この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
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通常は、抗炎症療法と炎症部位に物理的・機械的な負荷をできるだけかけないセルフマネージメントをしっかり行うことで一過性に治癒します。しかし、数ヵ月以上の治療を必要とする遷延化・慢性化した末梢・脊椎関節炎に移行することも、まれではありません。