変形性関節症 |
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)
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変形性関節症は筋・骨格系疾患の中では最も頻度が高く、世界で最も患者数が急速に増加している疾患の一つです。膝・股関節の変形性関節症だけでも、現在は世界で3億人以上が罹患しており、1990年からの約30年間で10%近くの増加を示したと報告され、毎年1億5千万人もの患者が発生していると言われています。また今後も人口の高齢化により患者数が増加すると考えられています。
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3. この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)
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変形性関節症は発症部位により有病率に男女間で大きな差があり、例えば女性は膝・股・手指で男性よりも罹患が多く、頚椎や肩関節では女性は男性よりも少ないと報告されています。手指・股・膝関節では50歳以上で発症率が増加し、80歳頃から低下します。 性別 加齢
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4. この病気の原因はわかっているのですか?(病因)
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関節軟骨の変性が病理学での特徴ですが、変形性関節症の原因は不明です。発症と疾患の進展には遺伝的要因と環境要因が複雑に関連して、相互的な作用がある多因子疾患と考えられています。 |
5. この病気の発症にかかわるものは?(誘因)
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既往歴 肥満・生活スタイル 筋力不足(サルコペニア) スポーツ歴 職業 |
6. この病気は遺伝するのですか?(遺伝)
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変形性関節症の30-65%は遺伝的な関与があるとされていますが、詳しいことはまだわかっていません。多因子疾患である変形性関節症の発症には種々の遺伝子が関与していると考えられています。最近ではゲノム解析の結果から膝や股関節変形性関節症での疾患感受性遺伝子が相次いで発見され、変形性関節症の発症に関わる遺伝的要因が少しずつ明らかになっています。 |
7. この病気はどのような症状がおきますか?(症状)
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変形性関節症は典型的には中高年者に緩徐に発症し、初期では関節の軽い痛み、違和感、こわばりを訴えることが多く、安静時には症状は示さず、関節を動かす時にだけ痛みを感じ、安静により症状が軽快します。また運動開始時だけ痛みを感じ、動き始めてしばらくすると痛みが軽快していくこともあります。病状の進行とともに運動時や荷重時の痛みが強くなり、ゴリっと鳴るような関節の異音、運動後もしばらく続く疼痛、関節液の貯留に伴う関節腫脹がみられるようになります。さらに進むと関節裂隙(関節の骨と骨の間隙間)の消失や骨棘形成(関節周囲にできる不要な骨)の影響を受けて関節が変形し、可動域制限(関節が動く範囲の制限)による関節の拘縮(動きが悪くなること)も呈するようになります。 疼痛 腫脹 運動制限 変形 他の身体的影響 |
8. この病気にはどのような検査法がありますか?(検査)
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画像検査 CT検査 MRl検査 血液検査 関節液検査 |
9. この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)
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治療の目的は、症状の軽減と関節機能の維持または改善です。保存療法としては、力学的負荷を減らすための減量などの生活指導、関節周囲の筋力訓練などの運動療法を行います。荷重関節では杖の使用も関節への負担が減り有効です。また変形性膝関節症では足底板、装具療法も有効です。痛みに対しては、必要に応じて薬物療法を行います。変形性関節症に使用する薬剤としては、鎮痛目的に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・アセトアミノフェン・トラマドールなどの弱オピオイドなどを内服または外用で使用します。また関節内にヒアルロン酸製剤や副腎皮質ステロイドを投与することもあります。保存療法を行っても効果が不十分な場合には各種の手術が行われます。 |
10. この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)
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膝や股関節の変形性関節症は末期には体重がかかると強い痛みのため歩行が困難となります。とくに膝では正座は困難で関節の動揺性が進行すると、歩く時上体が左右に揺れ脚を引きずって歩きます。股関節では股が開きにくくなったり、靴下や爪切り動作など日常動作が極めて困難となります。またバスや乗り物の乗り降り、階段の昇降が困難となります。さらに進行すると、痛みは安静にしていても常時感じるようになり、睡眠も妨げられます。 |
11. 疾患別各論
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1.変形性膝関節症 |
【情報更新】令和5年4月