リウマチを知ろう!

リウマチに関連する病気

乾癬性関節炎

①乾癬性関節炎とは? (定義) 

乾癬性関節炎は、皮膚の病気である乾癬に、腫れと痛みを伴う手足などの関節炎を合併する病気で、脊椎関節炎という共通の症状を示すいくつかの病気からなるグループに含まれます。乾癬性関節炎では、関節炎に加えて、腱や靭帯が骨に付く部位の炎症である付着部炎を始めいくつかの関節および関節周囲の症状を示し、どの症状がみられるかは患者さんそれぞれで異なります

②この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?(疫学・頻度)

日本の乾癬患者数は、人口の0.2〜0.3%程度と考えられており、これは欧米の2〜3%より少ない数です。乾癬性関節炎は、乾癬患者さんの8〜13%程度とされています(J Dermatol 2021; 48: 741-749)。したがって、乾癬性関節炎の患者数は、およそ3〜5万人くらいと推定されます。

③この病気はどのような人に多いのですか?(男女比・発症年齢)

この病気における男性と女性の割合はほぼ同じです。どの年代にも起こりますが、25~30歳くらいの若い年代で発病することが多いとされています。

④この病気の原因はわかっているのですか?(病因)

この病気の原因は不明ですが、何らかのきっかけで免疫系の細胞が異常に活性化して炎症が持続することよっておこると考えられています。

⑤この病気は遺伝するのですか?(遺伝)

必ず遺伝するわけではありません。しかし家族内での発症が多いことから、何らかの遺伝的素因はあると思われています。実際に、この病気の発病に関連する可能性がある遺伝子(疾患感受性遺伝子)が複数報告されています。

⑥この病気はどのような症状がおきますか?(症状)

皮膚疾患である乾癬がある患者さんに後から関節症状が起こるのが一般的な経過ですが、関節症状が皮膚症状に先行してみられる場合も5〜10%にあります。爪の病変もみられることが少なくありません。関節やその周囲の症状として、手足の関節炎、手足の指の腫れ(指趾炎)、付着部炎、脊椎関節炎などがみられます。脊椎病変は乾癬の患者さんの約8%に見られる、と言われていますので腰痛が続く場合は脊椎や仙腸関節の病変の有無を調べる必要があります。その他、眼のぶどう膜炎や炎症性腸疾患がみられることもあります。また乾癬性関節炎では、肥満やメタボリック症候群の患者さんが多くみられ、心筋梗塞のリスクが高く、死亡の主要な原因とされているため、疾患による炎症のコントロールを治療でしっかりと行うと共に、食事や運動などの生活習慣にも注意が必要です 。

⑦この病気にはどのような治療法がありますか?(治療)

乾癬性関節炎の治療は、炎症と痛みに対して痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)を用います。抗リウマチ薬も用いられ、特にメトトレキサートは手指など末梢関節炎に効果があるといわれています。最近の経口薬としては、炎症細胞に働いて炎症を起こす物質を抑えるアプレミラスト(商品名オテズラ)があり、皮疹や比較的軽症の関節症状に用いられます。アプレミラストは1日10 mgで開始し、毎日10mgずつ増量(10-10、20-10、20-20、30-20 mgとそれぞれ1日2回に分けて投与)、6日目に60mg(30 mgを1日2回)になったらこれを継続する、という変則的な服用方法をとります。

内服薬で効果が不十分な関節炎、付着部炎、指趾炎、脊椎関節炎には生物学的製剤が用いられます。生物学的製剤は皮膚症状だけの尋常性乾癬にも使用されます。生物学的製剤の中で、腫瘍壊死因子(TNF)の阻害薬であるインフリキシマブ(商品名レミケード)とアダリムマブ(商品名ヒュミラ)は最も早くから使用されており、長期間での有効性や安全性が認められています。2019年にはセルトリズマブ・ペゴル(商品名シムジア)も認可され使用できるようになりました。また、乾癬の病態と強く関係するとされるインターロイキン(IL)-17Aの阻害薬であるセクキヌマブ(商品名コセンティクス)、イクセキズマブ(商品名トルツ)、やIL-17受容体A阻害薬ブロダルマブ(商品名ルミセフ)も保険適用となっています。IL-17の阻害は皮疹に対してはTNF阻害よりも効果がみられる場合があります。また、IL-12とIL-23の阻害薬であるウステキヌマブ(商品名ステラーラ)や、IL-23阻害薬であるグセルクマブ(商品名トレムフィア)、リサンキズマブ(商品名スキリージ)も乾癬性関節炎に保険適用となり使用できます。ただし、これら生物学的製剤は、感染症などの副作用が問題となることがありますので、使用にあたっては必ず専門医にご相談ください。これらの生物学的製剤でも効果不十分な場合、先に述べたアプレミラストなどを追加併用すると効果が得られる場合もあります。

最後に関節リウマチで使用が拡大しているJAK阻害薬の中で、ウパダシチニブ(商品名リンヴォック)が2021年5月に乾癬性関節炎(関節症性乾癬)に保険適用となり、有効性は非常に高く、関節症状を伴う乾癬の新たな治療薬として期待されています。

「乾癬性関節炎で用いられる生物学的製剤とJAK阻害薬」

薬 剤 名 商 品 名 標 的 投 与 方 法 投 与 間 隔
アダリムマブ ヒュミラ TNFα 皮下注射 初回80mgを投与、以後2週間隔で40mgを投与
インフリキシマブ レミケード 点滴静注 体重あたり5mgを初回、2週、6週目に投与、以後8週間隔で点滴静注

セルトリズマブ・ペゴル

シムジア 皮下注射 1回400mgを2週間隔で投与
セクキヌマブ コセンティクス IL-17A 皮下注射 1回300mgを初回、1週、2週、3週、4週目に投与、以後4週間隔で投与
イキセキズマブ トルツ 皮下注射 初回160mg、以後80mgを12週まで2週間隔で投与、それ以後は80mgを4週間隔で
ブロダルマブ ルミセフ IL-17A受容体 皮下注射 1回210mgを初回、1週、2週目に投与、以後2週間隔で投与
ウステキヌマブ ステラーラ IL-12/IL-23 p40 皮下注射 1回45mgを初回、4週に投与、以後12週間隔で投与
グセルクマブ トレムフィア IL-23 p19 皮下注射 1回100mgを初回、4週後、以後8週ごとに投与
リサンキズマブ スキリージ 皮下注射 1回150mgを初回、4週後に投与、その後12週間隔で投与
ウパダシチニブ リンヴォック JAK1 内服 毎日15mgを1日1回内服
⑧この病気はどのような経過をたどるのですか?(予後)

乾癬性関節炎では、徐々に関節の破壊が生じ変形が進行します。また、脊椎炎では炎症の結果、背骨がくっついてしまい強直という状態になることがあります。これらによって、関節や身体の動きが障害を受け、日常生活に支障をきたすようになる可能性があります。乾癬性関節炎は診断が遅れることが多く、診断の遅れは関節破壊の進行など悪い経過を招くため、早期からの適切な治療が重要です。皮膚の乾癬があり、関節や関節周囲の痛み、手や足の指の腫れ、首や背中、腰の痛みがある場合にはリウマチ専門医を受診することをお勧めします。前述のTNF阻害薬やIL-17阻害薬などの生物学的製剤や、JAK阻害薬のウパダシチニブは、乾癬性関節炎の症状を改善するだけでなく、骨破壊を抑制することが示されていますので、早めに開始することで病気の進行を抑えられる可能性があります。また、合併しやすい肥満やメタボリック症候群に注意して日常生活を送ることも重要です。

イラストカット

⑨よく聞かれる質問とこたえ(FAQ)

Q1 皮膚の症状と関節炎の進行と関連がありますか?

皮膚症状がよくても関節炎が悪い場合、またその逆の場合もあり関連性はありません。爪の病変は、関節炎と関連があると言われていますが、その重症度との関連は明らかではありません。

Q2 関節が壊れた時には人工関節などをすることができますか?

部位にもよりますが、関節リウマチと同じく人工関節手術などが可能です。しかし、乾癬の皮膚は刺激に対して過敏に反応して炎症が起きるため、細心の注意が必要です。