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2. ビスホスホネート製剤を服用していると必ず顎骨壊死が起こるのでしょうか?
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ビスホスホネート製剤を服用しても必ず顎骨壊死を発症する訳ではありません。いくつかの報告があるのですが、経口のビスホスホネート製剤であれば10万人年あたり1件程度といわれています。わかりやすく言うと、「10万人の人が1年間経口ビスホスホネートを服用すると。約1名に顎骨壊死が生じる」ということです。この数字をご覧になってどう感じますか?頻度は決して高くはない、むしろかなり低いという印象ではないでしょうか。ただビスホスホネートは骨に年の単位で沈着するので、服用が長期に及べば顎骨壊死のリスクは徐々に上昇します。4年以上の服用で顎骨壊死のリスクが上昇し始めるという報告もあります。
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3. 関節リウマチでは顎骨壊死が起こりやすいのでしょうか?
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関節リウマチには骨粗鬆症がしばしば併発するので、リウマチ患者さんのなかにはビスホスホネート製剤を服用したり、デノスマブの皮下注射を受けていたりする方も多くいらっしゃると思います。
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4. なぜ顎骨だけに壊死が起こるのでしょうか?
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もっともな疑問ですね。ビスホスホネートやデノスマブは全身の骨に分布するのに、なぜ顎骨だけに壊死が起こるのかという質問です。すべての理由が明らかにされている訳ではありませんが、理由のひとつは顎骨がさらされている環境、つまり口腔内細菌の存在です。特に抜歯などの外科的処置を受けた場合、顎骨はこの口腔と直接交通することになります。したがって口腔内衛生環境の悪さが顎骨壊死の発症因子・増悪因子となるのです。
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5. 何がきっかけで顎骨壊死が起こるのでしょうか?
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多くは抜歯などの外科的処置とそれに伴う感染を契機に発症します。もちろん外科的処置がなくても顎骨壊死が生じることもあります。 |
6.顎骨壊死の症状と治療
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顎骨壊死の症状は歯肉の疼痛や腫脹,歯の脱落です。抜歯部の顎骨が肉芽組織で覆われずに口腔内に露出したまま(ドライソケット)になります。また壊死に陥った骨が腐骨となれば膿がたまります。膿は腐骨部から口腔内や皮膚へ形成された瘻孔を通して排膿されます。 |
7. 顎骨壊死を予防するためには抜歯の際にビスホスホネートをやめなくてはいけませんか?
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2016年に出された骨吸収薬関連顎骨壊死に関するポジションペーパー1)では、原則的に歯科治療の前にビスホスホネートを休薬する必要はないとしています。その理由として、半減期2)が2年~3年のビスホスホネートを歯科治療前に3カ月休薬しても顎骨壊死の発症予防に効果があるかは疑問だからです。つまり、休薬を積極的に支持する根拠には欠けており、さらに言えば、ビスホスホネートを休薬することで生じる骨折リスクの上昇が顎骨壊死予防というベネフィットを上回る可能性もあります。 |
8. 顎骨壊死を予防するためには?
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顎骨壊死にとってもっとも大切なことは予防です。顎骨壊死は感染が引き金となって発症・増悪します。したがって口腔衛生の改善と感染対策を徹底することが重要です。気軽に相談できるかかりつけの歯科医師を持ち、定期的な歯科クリーニングを欠かさないようにしましょう。
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【情報更新】令和4年8月