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骨粗鬆症のお薬を服用して、抜歯(歯科治療)を行うと「顎(あご)の骨が壊死(えし)する」という話を聞いたことがありませんか? ここではこの顎骨壊死について解説します. |
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![]() 最近では,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に対するモノクローナル抗体で血管新生を抑制するベバシズマブ(商品名:アバスチン)でも顎骨壊死が生じることが報告されたので薬剤関連性顎骨壊死Medication-related Osteonecrosis of the Jaw(MRONJ)といわれます. したがって同じ骨粗鬆症の薬剤でもビタミンD製剤(商品名:アルファロール,エディロールなど),エストロゲン製剤(商品名:エビスタなど),テリパラチド(商品名:テリボン・フォルテオ)を使用しても顎骨壊死(MRONJ)は起こりません.誤解のないように言い換えると,「ビタミンD製剤を服用中に仮に顎骨に壊死が生じても,それは薬剤関連性顎骨壊死とはよばない」ということです. |
起こるのでしょうか?
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![]() またこれらの骨吸収抑制剤を悪性腫瘍の骨転移(転移性骨腫瘍)に対して使用した場合には,顎骨壊死の発生率は100倍程度上昇するといわれています.骨粗鬆症治療における顎骨壊死とは区別して考える必要があるでしょう. |
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![]() 顎骨壊死の発症・増悪因子にはステロイド製剤の使用と口腔内衛生環境の悪化があります.関節リウマチでは唾液分泌が低下することがあり,また手指の変形が進行すれば歯磨きの際に磨き残しが生じます.その意味でリウマチ患者さんでは通常の骨粗鬆症患者に比べて,顎骨壊死の発症頻度が高いことが予想されます.ただ残念ながら,具体的にどのくらい顎骨壊死の頻度が高まるのかについて定まった数字は出ていません. また,癌・高齢・透析も顎骨壊死のリスク因子です.いずれにしても定期的に歯科健診を受けることが,とりわけリウマチ患者さんにとっては大切になるでしょう. |
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![]() また顎骨にかかる咬合力も要因のひとつと考えられています.成人男子では平均で60kgもの力が毎日繰り返し顎骨にかかるのですから,壊死が顎骨に起きてもさもありなんという訳です. さらに顎骨は全身の骨なかで新陳代謝がもっとも速い組織であるために,服用したビスフォスフォネートが顎骨に高濃度に沈着しやすいことも理由のひとつ考えられています. |
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![]() 顎骨壊死の確定診断と治療は口腔外科専門の歯科施設で行なう必要があります.最近ではテリパラチド(PTH製剤)の有効性が報告されてはいるものの,形成された腐骨は外科的に切除することが必要です. |
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![]() ただし,ビスフォスフォネートの投与期間が長期に及んでいたり,ステロイド投与などのリスク因子がある場合でかつ,歯科処置に時間的猶予がある場合には,治療前に2か月間の休薬をすることもあります.この場合,創傷治癒が完成した時点でビスフォスフォネートを再開します. 1)ポジションペーパーとはガイドライン(指針)とはいえないものの,その疾患に携わるものが共有すべき考え方のことです. 2)この場合の「半減期が2年」とは「ひとたび骨に沈着したビスフォスフォネートが半分に減少するまで2年かかる」という意味です. |
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