生物学的製剤   

 

どのような効果が期待できますか?

 

生物学的製剤を使用すると、主に2つの効果が期待できます。
ひとつは、関節の炎症を抑える効果です。この効果は従来の抗リウマチ薬に比べて、投与開始から短い期間でみられます。炎症が抑えられれば関節の痛みや腫れはよくなり、関節を使いやすくなり、日常生活も送りやすくなります。生物学的製剤を開始すると約7割程度の患者さんがほとんど炎症や症状がない寛解もしくは低疾患活動性の状態になるとされています。発病から何年もたってから生物学的製剤を開始するよりも、早期に開始したほうがこの効果は大きいことが知られています。
もうひとつの効果は、関節リウマチの進行により起こってくる関節の骨や軟骨の破壊を抑える効果です。すなわち、生物学的製剤を早期から用いることで、関節の状態を発病前のままにできる可能性があります。
その他、生物学的製剤を使用することで、ステロイド薬や痛み止めをやめることができる、関節リウマチでみられる骨粗鬆症を抑えることができる、などの効果が期待できます。

 

 

 

どのような副作用がありますか?

 

 生物学的製剤はもともと体内にある蛋白とほぼ同じ構造であるため、肝臓や腎臓への影響はほとんどありません。生物学的製剤で、もっとも注意が必要な副作用は感染症です。特に結核を含めた細菌感染には注意が必要です。生物学的製剤の開始前には、胸部レントゲンやCT検査、結核の血液検査、肝炎ウイルスの検査などを行い、感染症やそのリスクがないかを評価します。活動性の感染症がある場合には生物学的製剤は投与できません。感染症のリスクに応じて結核やニューモシスチス肺炎の治療薬を予防的に投与することがあります。また、肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなどの接種が推奨されます。
重篤な感染症でもっとも多いのが肺炎です。その他の感染症として、皮膚の感染症(蜂窩織炎、帯状疱疹など)、腎盂腎炎、腸管の感染症などがあります。発熱(特にふるえを伴う)、咳や痰、腹痛、皮膚が赤くなる、皮膚に痛みがある、などの症状があれば早めに医療機関に相談、受診することが必要です。高齢、肺の病気、ステロイド内服、リウマチの経過が長い、身体機能の障害が強い、糖尿病、などがあると肺炎など感染症のリスクが高くなるとされています。
点滴製剤では、投与中や投与後早期に発熱、皮膚のかゆみ、血圧の低下、呼吸困難などがみられることがあります。レミケードでは特に注意が必要です。皮下注射では、注射した部位が赤くなったり、腫れたりすることがありますが、大きな問題になることはほとんどありません。その他、TNF阻害薬は、うっ血性心不全、脱髄性疾患がある患者さんには投与できません。

 

 

いつからはじめるべきですか?

 

 通常は、メトトレキサートなど従来の抗リウマチ薬で治療しても、3-6か月以内に寛解といわれるほとんど症状がない状態、もしくはそれに近い状態にならない場合、生物学的製剤の追加を検討します。特にTNF阻害薬はメトトレキサートとの併用で効果が大きいことが知られています。生物学的製剤は、リウマチの症状が悪くなりどうしようもなくなってから開始するのではなく、炎症による症状が続いていれば、リウマチが進行する前のなるべく早い時期に開始すべき薬剤です。


令和5年1月更新

 

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